Netflixアニメ「大奥」が6月29日から独占配信されています。
幾度も実写化され、今秋にはNHKドラマ10『「大奥」Season2幕末編』がはじまります。
そんなよしながふみ 原作「大奥」が初めてアニメ化されました。
漫画「大奥」はアメリカのSF賞「ティプトリー賞」を受賞(2009年)しており、Netflixによる世界同時配信は海外ファンにも喜ばしいことでしょう。
ティプトリー賞の公式サイトによると、審査員は
「疫病によって日本の若い男性の4分の3が死亡し男女の立場が入れ替わった、パラレルな封建社会の日本」という設定に惚れ込んだとのこと。
この設定を用いて、男女間の微妙なパワーバランスで成り立つ社会を巧みに描き出した、と評価している。
隔月刊誌「MELODY」で、2004年8月号から2021年2月号まで16年連載され、最終巻19巻が発売された際には結末が話題・絶賛されました。
赤面疱瘡(あかづらほうそう)という架空の伝染病が発生します。
これは天然痘(疱瘡痘瘡・ほうそうとうそう)からヒントを得た病名だと思います。
江戸時代には麻疹(はしか)が流行し、流行の波は十三回発生、文久二(一八六二)年には約二十四万人が命を落とし、五代将軍・徳川綱吉も感染、死去したとされていますから、「大奥」はファンタジーでありつつも、史実に近づけた内容になっていると思います。
参照記事
江戸時代の麻疹と天然痘の流行と種痘を広めた佐賀藩 | おとなの歴史再入門 | NECフィールディング
Netflixアニメ「大奥」声優
・有功の小僧、玉栄、後の綱吉の父・桂晶院(梶裕貴)
・千代姫(菊池こころ)
・松平輝綱(斉藤貴美子)
・酒井忠朝(青木瑠璃子)
・加納久通(本田貴子)
・江戸っ子気質な旗本の息子、八代将軍・吉宗の「ご内証の方」、水野祐之進(関智一)
・「御三の間」で働く水野の先輩、杉下(木島隆一)
・村瀬正貴(飛田展男)
・副島(伊藤健太郎)
・赤坂(露崎亘)
・若衆(石狩勇気)
・御中臈、側室候補、松島(中村悠一)
・大奥総取締、藤波(神奈延年)
・御中臈、側室候補、柏木(古川慎)
・美顔の剣の達人、鶴岡(永塚琢磨)
・御中臈、側室候補、鈴本(亀山雄慈)
・捨蔵(福山潤)
・お信(佐藤みゆ希)
・ナレーション(窪田等)
監督:阿部記之
シリーズ構成・脚本:たかすぎ梨香
音楽:川井憲次
アニメーション制作:スタジオディーン
企画・製作:Netflix
Netflixアニメ「大奥」(感想レビュー)
そもそも、Netflixアニメのサムネイルを見た瞬間、
(あ、違うな)と思ったんですね。
「大奥」の表紙や扉絵そのものが動いてるような、そんなアニメが見たかったです。
どちらかと言えば、高畑勲監督「かぐや姫の物語」や山田尚子監督のアニメ「平家物語」のような淡めの雰囲気で描かれたアニメをイメージでした。
監督は『アルスラーン戦記』『幽☆遊☆白☆書』『劇場版BLEACH』Netflix映画『七つの大罪 怨嗟のエジンバラ』の阿部記之。
Netflix映画『七つの大罪 怨嗟のエジンバラ』が好評だったのか?
バトルものが得意そうな阿部記之監督がなぜ「大奥」なのだろう。
阿部記之監督のインタビュー
阿部監督は「ストーリーをどこも外すことなく、できる限り原作に忠実に作らせていただいた」と語る。
アニメ第1話は、約1時間20分の長尺で、8代将軍吉宗と水野祐之進の物語が描かれるコミックス第1巻をまるごとアニメ化した。
「第1巻は『大奥』という世界を紹介するようによしなが先生が描かれているので、我々もそこを割って3話で見せるよりは、第1話で描ききった方がいいだろうと。Netflixのシリーズでは、1話ごとの尺が固定ではないので、ストーリーに合わせて各話の尺を調整していきました」
参照記事 <大奥>“男女逆転大奥”の重厚な世界観を表現 原作に忠実に アニメならではの表現も(MANTANWEB) - Yahoo!ニュース
阿部記之監督はコミックス第1巻をまるごと第1話で描きたかったと。
なるほど。
1話目だけ79分、2〜10話は約30分のアニメです。
どうりで長いと思った!
原作に忠実っぽくはなっていますが、例えば、
異国人と会うには男子の正装する決まりに腹を立てる徳川吉宗(1巻P161)
漫画では加納久通が、
「でももし女子の正装だと十二単ですよ。
もっと重たくて煩わしいと思いますけど、、、」
それを聞いた吉宗は、
「、、、行ってくる」
不本意ながらも納得した様子が伺えます。
アニメでは久通のセリフが省略され、吉宗は腹を立てたまま部屋を出ていきます。
すべてをアニメに落とし込むのは難しいでしょうが、この場面を省略しては、吉宗と久通の関係性や性格が読み取りにくくなったり、後の久通の所業の説得力が弱くなるのではないか、
といった具合に、演出が物足りないように思うところがちょこちょこありました。
違和感があり漫画を読み直して「そういうことか」とわかる感じ。
監督の感性が私の好みではないんだろうな。
着物の描写にこだわっているとのことですが、
「大奥」をアニメ化する上で、最も苦労したのは着物の描写だという。
作中には、きらびやかな着物をまとったキャラクターが多く登場するが、ほぼ全てのキャラクターの着物にテクスチャーを貼りこんだという。貼りこむことで、立体感が出たり、着物が自然に見えたりする効果があるが、細やかで手間がかかるはずだ。
「アニメーションのセルのままではなく、着物の柄を動きに合わせて貼っていく。3Dアニメであればやりやすいのですが、2Dのアニメでは不得意なので、そこは人海戦術というか、丁寧に貼っていくしかない。ほかの作品ではなかなかやらないのですが、今回は挑戦してみました。何種類もある着物の生地、柄に合わせて貼りこみをしています。それを違和感なく見ていただけたら、我々としては大成功ですね」
参照 <大奥>“男女逆転大奥”の重厚な世界観を表現 原作に忠実に アニメならではの表現も(MANTANWEB) - Yahoo!ニュース
技術的なことはさておき、着物に柄があることで身分が高いことや、オシャレにお金を投じていることがひと目でわかります。
しかし、水野の黒い裃を格別にかっこいい、着こなしが素敵などは感じなかったです。
2023年アニメ『わたしの幸せな結婚』で着物が美しく描かれているのを見てしまい、どうしても比較してしまいます。
また、着物は「衣擦れの音」が良いところもあります。
緊張感を感じたり、さまざまな演出に使えます。
アニメならではのそうした工夫が見られ無いのも残念。
上様が大奥への朝の総触れする場面(1巻P122)
「上様のおなーりぃー」
襖が開いて上様が登場すると、正座していた男性たちが頭をいっせいに下げて「ザザッ」と音がするわけです。
ところがアニメでは、はじめから頭を下げている。
上様は(お掻取とやらの歩きにくいこと)とイライラし、
着物をバッサバッサとさせながら歩いてくるわけです。
ちょっと笑えるシーンです。
アニメではバッサバッサさせてない。
水野は頭を伏せながら
(この足捌き武芸の達人だという噂は本当だ、かなりお強いぞ!しかし何やら歩きにくそうな)
と感じる場面があります。
アニメでは省略!
この演出を省略しちゃうの!?
もったいないなぁ。
ことごとく表現して欲しい場面が削られてる感じで、物足りないアニメでした。