softcandy’s blog

20年以上の愛用レビューと本音の視点


スポンサーリンク

ベルヴェデーレ宮殿美術館、クリムト大損失!痛快すぎる大逆転劇の実話映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』【感想レビュー】

 

クリムトの名画『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』が、オーストリアのベルヴェデーレ宮殿美術館にあるのは知っていましたが、それは2006年まで。(『接吻』は今も展示中)

えっ!?無いの!?今はどこへ?

実は現在アメリカ(ノイエ・ギャラリー・ニューヨーク)にあります。一体なぜアメリカへ渡ったのか?オーストリア政府がよく手放したな!?その実話を描いた映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』を視聴しました。これで名画つながりの映画鑑賞も3連チャンです。

今回紹介する映画

アートや歴史好き、骨太なヒューマンドラマ・実話映画で感動したい人におすすめ

黄金のアデーレ 名画の帰還

82歳の女性がオーストリア政府に挑んだ、クリムトの名画を巡る返還訴訟の真実。

監督 サイモン・カーティス
主演 ヘレン・ミレン
(気品と力強さを併せ持つ圧倒的な演技力)
共演 ライアン・レイノルズ
(信念を貫く新米弁護士役を熱演)
Amazonで詳細・レビューを見る

はじまりは、アデーレの姪の相続

アメリカに暮らす82歳のマリア(ヘレン・ミレン)は、絵のモデルとなったアデーレの姪です。ある日、遺産がアデーレの元へ。その中にクリムトの名画が含まれているはずです。

駆け出し弁護士・ランディ(ライアン・レイノルズ)に協力を仰ぎ(なんと作曲家シェーンベルクの孫!)遺言を調べに&返還審問会(強制没収された美術品を持ち主に返還するための会)に出席するためオーストリアへ渡ります。

ベルヴェデーレ宮殿美術館のクリムトと第二次世界大戦

ベルヴェデーレ宮殿美術館を訪れたマリアは、クリムトの作品『アマリエ・ツッカーカンドルの肖像』の前に立ちます。1918年にクリムトが急逝したため未完成のまま残されたその絵を前に、彼女はぽつりと呟きます。

「うちの家族の友人で、収収容所で亡くなったの」

描かれた人物の切ない運命を知ることで、クリムトの絵画と第二次世界大戦の影、そしてナチスによる迫害の歴史が深く結びついていることを強く感じさせられる名シーンです。

 

そしてついに、伯母の名を冠した傑作『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』の前へ。

 絵を前にしたマリアの脳裏には、大好きだったアデーレ伯母さんとの思い出、そして戦争の記憶が蘇ります。

当時、叔父(アデーレの夫)から「早くオーストリアを出るように」と助言されていたものの、決断が遅れてしまったマリアの父。やがて渡航が禁止され、自宅にはナチスが押しかけて財産を次々と差し押さえていきました。そしてマリア夫婦は、両親を残したままナチスの厳しい見張りをかいくぐり、決死の国外脱出を試みます——。

「ただの裁判映画かと思ったら、まさかのナチスからの脱出劇!?」と思わずハラハラドキドキ。ですが、この過酷な過去を描くエピソードがあるからこそ、マリアがなぜあれほど故国オーストリアへ戻るのを嫌がっていたのか、その心の傷が痛いほど理解できました。

オーストリアで裁判できない!泣き寝入り!?

ベルヴェデーレ宮殿美術館の担当弁護士から告げられたのは、「絵画はそのまま美術館に留め置く」という決定でした。話し合いで解決しない以上、残された道は裁判のみ。しかし、絵の市場価値(数千億円規模)に比例する莫大な裁判手数料が必要となります。「個人にそんな大金は払えないだろう」と高を括ったオーストリア側の足元を見透かした対応だったのでしょう。

アメリカへ帰国しても諦めきれない弁護士ランディ

1億ドルとも言われる絵画の価値、そして何より彼自身の祖父もまたナチス・ドイツから逃れてアメリカへ渡った過去があったからです。

そんな折、彼は「条件を満たせばアメリカ国内で訴訟を起こせる」という法的抜け道を発見します! 直談判しに行った上司にはあっさり断られますが、この上司役が『ゲーム・オブ・スローンズ』のタイウィン・ラニスターでおなじみのチャールズ・ダンス!激渋なスーツ姿で登場し、思いがけない出演に大興奮でした。

それでも諦められないランディ

なんと事務所を辞めてまで訴訟に挑みます。勝手に退職して最初は激怒していた妻(ケイティ・ホームズ)が、最終的には夫の信念を理解して応援する姿には地味にジーンとさせられました。

事態はついにアメリカ連邦最高裁にまで持ち込まれます。結末を知っていても息をのむ展開の連続!さらに協力者であるオーストリア人記者フベルトゥスが手を貸す理由も明かされていきます。

彼を演じたのは『グッバイ、レーニン!』のダニエル・ブリュール。「どこかで見た顔だ!」とスッキリしつつ、その存在感ある演技に惹き込まれました。

それにしても、最後までベルヴェデーレ宮殿美術館の不誠実な態度は本当に酷かった……!(歴史的史実とはいえ「これ本当!?」と疑いたくなるほどです)。

両親を置いて逃げたマリアの苦しみ

マリアは「両親を置いて自分だけ逃げてしまった」という罪悪感をずっと抱えていました。 ですが、ご両親の立場に立てば「もっと早く脱出させてあげればよかった」という後悔と申し訳なさでいっぱいだったはず。自分たちには何もしてあげられない中で、唯一できたことが「快く見送り、無事を祈るだけだった」のではないでしょうか。

命がけでアメリカへ逃げ延びてくれたことを、ご両親は何より喜んでいたと思います。

「絵画を取り戻す」それは単なる所有権の主張ではなく、思いがけず深く胸を打つ物語でした。

馴染み深いタイトル『黄金の女』

ところでこの絵画のタイトル『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』に馴染みがありません。有名な絵で知ってるはずなのに...不思議に思っていましたら、この映画の原題は『Woman in Gold』。ナチスがユダヤ人の名を隠すために書き換えた『黄金の女』というタイトルでした。

あぁ!そうそう!『黄金の女』だった!!成金っぽい嫌なタイトルだと思っていましたが、そういうことか!いつから、再び『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』という名称に戻ったのか?

それは2006年に遺族(マリア・アルトマン)へ返還されたタイミングだそう!

えー!!

オーストリア側は戦後もその名を使い続け、歴史を隠蔽しようとしていたようです。

クリムトが3年もの歳月をかけて描いた最高傑作であり、山田五郎氏も「豪華で凝っている」と絶賛する作品だからこそ、オーストリア側も国の宝として手放したくなかったのでしょう。

しかし、誠意のない対応で交渉の余地をなくし、結果的にすべてを失って自爆してしまった……という点においては、現代のビジネスや交渉事における強烈な教訓としても痛快で、実に見応えがありました!

 

アートと歴史の関わりがとても興味深く、おすすめです。

映画『黄金のアデーレ 名画の帰還

 

モデルのアデーレについての深掘りや、絵画についての解説が面白いです。

山田五郎・動画【クリムト黄金様式の最終到達点!】 

 

ゴッホの「耳切り事件」は日本のあの風習の勘違い?自画像は「自撮り」だった?映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』感想・解説

 ゴッホの「耳切り事件」は日本のあの風習の勘違い?自画像は「自撮り」だった?映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』感想・解説 

フェルメールの映画に続き、ゴッホの映画もあったことに気がつきました。公開当時、話題になっていた記憶があります。

「誰がゴッホを演じたのか?」と確認してみると、なんとウィリアム・デフォー!『プラトーン』など、男気溢れる役のイメージが強かったため、「ゴッホのような繊細な心を持った男性を演じているの!?」と驚きました。しかし、彼は本作で見事に初のアカデミー主演男優賞へノミネートを果たしています。

さらに、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のマッツ・ミケルセンや、『潜水服は蝶の夢を見る』でもシュナーベル監督とタッグを組んだマチュー・アマルリックなど、大好きなキャスト陣が出演していることも判明!

監督は『潜水服は蝶の夢を見る』で素晴らしかったジュリアン・シュナーベル。同作でアカデミー賞4部門にノミネートされ、カンヌ国際映画祭やゴールデン・グローブ賞で監督賞を獲得した名匠です。

これは絶対に見なければ!

今回紹介する映画

孤高の天才画家の情熱と孤独を描く圧巻のヒューマンドラマ

永遠の門 ゴッホの見た未来

不遇の晩年を過ごしたフィンセント・ファン・ゴッホの最期の日々を描く奇跡の物語。

監督ジュリアン・シュナーベル
主演 ウィレム・デフォー
(アカデミー賞主演男優賞にもノミネートされた凄絶な熱演)
Amazonで詳細・レビューを見る

ゴッホは日本好き

パリの画壇で全く評価されていなかったフィンセント・ファン・ゴッホ(ウィレム・デフォー)。

 劇中、出会ったばかりのゴーギャン(オスカー・アイザック)へ「マダガスカル? 日本へはどう?」と尋ねる場面があります。これはゴッホ自身が日本へ強い憧れを抱き、浮世絵から多大な影響を受けていた背景があるからです。日本人がゴッホの絵に惹かれるのは、どこか日本人の好みに通じる趣を感じ取るからかもしれません。

例えばゴッホの『花咲くアーモンドの木の枝』も、どこか和の風情を感じさせる作品です。以前、インテリア雑誌でこの作品の壁紙を貼った部屋を見かけたのですが、洋風・和風どちらの空間にも自然と馴染んでいて本当に素敵でした。


ゴッホ特有の力強い筆あとがエンボス加工と印刷でリアルに表現された、貼ってはがせる輸入壁紙。浮世絵など日本美術(ジャポニスム)から強い影響を受けた名作『花咲くアーモンドの木の枝』で、お部屋を華やかに彩ることができます。

ゴッホ(35歳)、ゴーギャン(40歳)。この歳から共同生活はキツイだろ

ゴーギャンの「南へ行け」というひと言で、ゴッホは南フランスのアルルへやって来ます。え?会ったばかりの人のアドバイスで?

ゴッホの「極端で純粋すぎる性格」が伺えます。

しかし、程なくして地元の人々とトラブルを起こしたゴッホは、強制的に病院へ入れられてしまいます。駆けつけた弟で画商のテオ(ルパート・フレンド)は、仕事のためすぐにパリへ戻ってしまいますが、ゴッホが望んだ「仲間との共同生活」を叶えるため、ゴーギャン(オスカー・アイザック)をアルルへ送り込みました。こうして2人の共同生活が始まります。

ちょっと変わり者のゴッホとの生活。予感通り不安しかありませんが、結果はなんと約2ヶ月で破綻! はやすぎる!

あの「耳切り事件」の真相とは?【考察】

ゴッホが自ら耳を切った理由には諸説ありますが、映画では「ゴーギャンへの謝罪として渡したかった」と描かれていました。

ここで思ったのですが、日本に強い憧れを持っていたゴッホのことですから

「日本では江戸時代、吉原の遊女が愛する男性へ本気の愛と誠意の証として小指を切って渡す(切指)風習があった」

という知識を、どこかで耳にしていたのではないでしょうか。それを彼なりに解釈した結果、「耳を切って贈ることが本気の謝罪になる」と思い込んでしまったのでは...。まあ、耳を送られたゴーギャン側からすればホラーでしかありませんが!

耳にガーゼを当てた自画像を残した理由【考察】

また、ゴッホは数多くの自画像を残していますが、耳にガーゼを当てた姿も描いています。 これもしばしば「なぜこんな自画像を描くの?狂ってる!」と解釈されることがあります。人は理解できないモノに対してすぐに「狂ってる」と決めつけます。

現代ならスマホで自撮りして「怪我しました、こんな感じです」とSNSやLINEで知らせることができますが、当時そんなものはありません。そう考えると、あの自画像は遠く離れたテオに対する「命に別条はないよ、絵も描けているよ」という、生存確認のための「自撮り」だったのでは?そう考えると、人間味が感じられますし、絵に悲壮感が漂っていないのも頷けます。


1888年末の耳切り事件後、退院直後に描かれた名作。鏡に映った姿を描いたため実際には左耳の傷ですが、画面上では右耳に包帯が巻かれているように見えます。当時のゴッホの精神状態や画風の変遷を象徴する作品です。

 

ゴッホは37歳という若さでこの世を去りました。映画で彼を演じたウィレム・デフォーは撮影当時63歳でしたが、残されている肖像画のゴッホと驚くほどそっくりです。作品では彼の晩年が詩的な映像で描かれているものの、絵は一向に評価されず、周囲からも理解されない姿があまりにも不憫に思えました。

ただ、山田五郎さんが動画(解説)で「ゴッホは自分に優しくしてくれた人を肖像画に描いている」とおっしゃっていたのを思い出します。彼が描いた『郵便配達夫ルーラン』は温かみのある素晴らしい絵だなと感じます。

 

劇中には、ゴッホがポール・ガシェ医師(マチュー・アマルリック)の肖像画を描くシーンがありました。つまり、ゴッホにとってガシェ医師は「優しい人」だったのですね。実際に彼はゴッホの晩年を温かく支え、その最期を看取ることになります。

この『医師ガシェの肖像』には2つのバージョンが存在します。そのうちの「第1バージョン」は、1990年にオークションで当時の史上最高額となる8,250万ドル(当時のレートで約125億円)で落札されました。競り落としたのは、大昭和製紙名誉会長の齊藤了英氏! 全然知りませんでした!なんと日本にあった!

しかし齊藤氏の死後、遺族によって1997年に売却され、現在は所在不明と発表されています。日本の美術館に収蔵されるチャンスがあったかもしれないと思うと、なんとも残念でなりません。

第2バージョンはパリのオルセー美術館に収蔵されています。そして、実はガシェ医師自身も画家でした。彼が描いた『死の床のファン・ゴッホ』という作品も、同じくオルセー美術館に収蔵されています。

参考リンク 医師ガシェの肖像 - Wikipedia


なぜ死後ゴッホは有名になったのか? 弟テオの死後、妻ヨーが整理・編集して出版したゴッホの書簡集。これにより、単なる「狂気の画家」ではなく、「芸術に対して知的で熱烈な情熱を持った人物」としての評価が定着し、彼の絵画の価値が世界的に飛躍するきっかけとなりました。

そうそう、マッツ・ミケルセン。

彼は神父役で登場したのですが、それはそれでセクシーなのよ!!登場時間は短いですが、マッツミケルセンのファンは見て損は無いと思います。