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趣味もやる気も無く、漠然とした毎日を過ごす男に、突然やってくる恋と殺人。映画 『ヒメアノ~ル』(感想レビュー)

  

映画 『ヒメアノ~ル』を見ました。

ヒメアノ~ル

ヒメアノ~ル

  • メディア: Prime Video
 

R15+指定  

 

原作は古谷実氏の漫画『ヒメアノ~ル

 

『ヒメアノ~ル』あらすじ

 清掃会社で働く岡田進(濱田岳)は趣味もやる気も無く、漠然と不安な日々を過ごしている。

職長の安藤勇次(ムロツヨシ)に相談すると、彼はカフェで働く阿部ユカ(佐津川愛美)に恋をして忙しいと言う。

ふたりでカフェに訪れると、岡田は高校時代の同級生・森田正一(森田剛)と数年ぶりに偶然再会する。

ユカは岡田が森田と会話するのを見て、岡田に森田にストーカー行為をされて困っていると打ち明ける。

ヒメアノ〜ル』とは、手のひらサイズのヒメトカゲのことで、つまり強者の餌となる弱者を意味する。

    

映画『ヒメアノ~ル』感想レビュー

 

ストーカー行為を心配した岡田進は阿部ユカに警察に相談するようすすめます。

「前にも相談したんだけどストーカーに対しては実害か証拠が無いと警察は動けないって」

それを聞いた岡田は、

「そんな実害があってからじゃ遅いじゃない」

 

映画 『ヒメアノ~ル』はグロとか言われますが、印象的だったのは、弱者が必要なときに、救ってもらえる機関が無いということでした。

実害か証拠が無いと警察は動けないって、被害者には残酷な現実ではないでしょうか。

逗子ストーカー殺人事件をはじめ、事件をきっかけにストーカー規制法の改正などがおこなわれていますが、何をどうしたらストーカーから被害者を守れるのか、ストーカーもピンからキリまであって、警察の注意で止めるストーカーもいるでしょうし、結局は「まさか殺すとは」となってから、ようやくそのストーカーの恐ろしさを知ることになることもあります。

  

岡田はユカに自分の家に来るように提案します。

自分たちでどうにかするしかないからです。

岡田の家に転がりこんだユカは運よく被害を受けずにすみますが、九死に一生を得たことをユカは知らないでいることにその紙一重さにゾッとさせられます。

またユカのそうした行動で、まったく関係のない人が巻き込まれてしまいます。

日常がいつどんなことでひっくり返るかわからない怖さがあります。

 

もしも、ストーカー被害を警察に報告したときに、何か手を打てれば、ここまでの事件に発展しなかったのではと思うストーリー展開。

実際、何度も警察に相談していたのにストーカーに殺害されてしまったニュースも耳にします。

「そんな実害があってからじゃ遅いじゃない」

岡田の言葉は、多くの人が思っていることではないでしょうか。

 

不朽の名作映画『タクシードライバー』で、帰還兵のトラビスがパランタイン大統領候補の演説集会に向かい暗殺を企む場面があります。

ところが厳重な警備で、トラビスは暗殺のチャンスを失います。

警備のおかげでパランタイン大統領候補は死なずに済んだし、トラビスも犯罪者にならずに済み、抑制効果を高めれば、未然に防げることがあることを知った映画でした。

  

不審者がいる場合は、巡回パトロールの強化をお願いするのも、ひとつの手段ではないでしょうか。

運転中に巡回中のパトカーに遭遇すると、何も悪いことはしてないけど、やっぱりドキッとするし、抑制効果が期待できると思います。

それにしても、ユカは危険を感じているわりにストーカー対策をしないのはどうなのか。

  

岡田が森田に卒業後どうしていたか質問すると、就職に関して「いろいろ」と語彙を濁します。  

森田正一は高校で酷いイジメに遭っていたましたが、単純にイジメだけの問題では無かったのではないか。 

森田は社会に出てからも苦労してきたのではないでしょうか。

 

いつだったかニュースで、関東で仕事が無く、知人に関西で仕事があると聞いて頼りに行ってみたが、実際は仕事が無く、無一文になり自暴自棄になって事件を起こした男性がいました。

働く意思があっても、仕事を与えてもらえないくやしさ、ひもじさが、社会に対する怒りとなったようでした。

わずかな希望で犯罪が起きずに済むことってあるのではないでしょうか。

 現在、コロナで困窮している人々に食料配布を行っている機関があります。

フードパントリーとも呼ばれ、埼玉県では埼玉県庁福祉部が後押しするなど輪が広がっています。

アメリカではバイデン大統領が鉄道整備にのりだし、多くの雇用の確保を推進する意向だとニュースを報道していました。

日本はオリンピックに向けて建設、鉄道整備などを行ってきましたが、オリンピックが終わった後、どうなるのでしょうか。

コロナで失業したなどの理由で他人に暴力を振るったり、器物損害、万引きなどのニュースを見かけるようになってきました。

 

残忍な森田ですが、彼の中に残っていた思い出に切なくなりました。

彼もかつてはごく普通の少年だったのだなぁ、と思わされます。

森田正一をV6の森田剛氏が演じていて、よどみがなく、ときどき、どこか少年の面影みせる声が役にあっていていいなと思いました。