映画「ナポレオン」(2023年)を見ました。
ホアキン・フェニックス主演 × 巨匠リドリー・スコット監督
ナポレオンと言えば冬将軍。
1812年、フランスの皇帝ナポレオン率いるフランス軍がロシア遠征で、厳しい寒さが兵士たちに追い討ちをかけ、フランス軍は撤退に追い込まれたといわれています。
そのロシア遠征が無料で10分間、映像公開されています。寒そう!
本編10分映像(無料)予告 「ナポレオン」AmazonPrimeVideo
映画「ナポレオン」 (感想レビュー)
映画『ジョーカー』(2019年)でアカデミー主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスが演じるナポレオンを楽しみにしていました。
ホアキン・フェニックスは身長173cm。
ナポレオンは身長169cmとされていて、体格的に大きな差はないみたいです。
(159cmなど諸説ありますが概ね169cm前後が定説)
映画「ナポレオン」は妻・ジョセフィーヌとナポレオンのやりとりを中心にナポレオンの活躍が描かれていました。
これまでの英雄扱いな目線とは異なり、ゴシップで恥をかいたり、追いかけ回されて転んだり、めそめそ泣いたり、コルシカ島出身の田舎貴族が昇進していくナポレオンの姿が生々しく描かれ、面白い映画だと思いました。
またエキストラを雇い、実際に撮影しているので迫力があります。
1805年アウステルリッツの戦い、1815年ワーテルローの戦いなど、当時の戦争の再現も素晴らしかったです。(歴史マニアからしたらいろいろ言いたいことはあるかもしれませんが)
ナポレオンハットなど当時を再現した衣装も素敵です。
対談動画でリドリー・スコット監督が
「(ナポレオンは)欠点が多いからこそあれほどの立身出世をなし得た。実に複雑でひとすじ縄ではいかない男だ」
ホアキンは、
「一方でユーモアと茶目っ気もあった」
と答えています。
まさに映画「ナポレオン」の面白いところはそういうナポレオンが描かれていることだと思います。
対談動画「リドリー・スコット監督×ホアキン・フェニックス」
ナポレオン(当時24歳)が「二つの高地を奪取して、次にそこから大砲で敵艦隊を狙い撃ちにする、という作戦」を立て、次の次の司令官であったデュゴミエ将軍がこれを採用し、作戦は成功します。
血飛沫を浴びたナポレオンの顔が印象的です。
ナポレオンは功績が認められ、一挙に旅団将軍(少将相当)に昇進し、ナポレオンの快進撃がはじまります。
ナポレオンはパリの陸軍士官学校砲兵科を卒業しており、なるほどそれで大砲を!
勉強していなかったらこの作戦は思いつかなかったでしょう。
機動戦士ガンダムのシャアがいちはやくモビルスーツの未来を予測して、スキルを独自に身につけたのと同じ感覚で、ナポレオンは当時人気だった騎兵科ではなく、砲兵科を選んだのではないか。
ちなみに学校の通常の在籍期間が4年前後に対し、ナポレオンは11ケ月で卒業!
開校以来の最短記録を出しています。
賢かったのもあるでしょうが、家が裕福ではなかったので節約のためもあって真剣に勉強したのではないか。
学生時代は映画で描かれていませんが、ナポレオンをより知りたくなるような魅力的な映画に仕上がっていると思います。
映画は(24歳)1789年頃からナポレオンが亡くなる(51歳)1814年までを 2時間38分で表現するわけですから、サラリと世界史をなぞる感じではあります。
ひとつひとつの出来事を深掘りしていないぶん、難しくなく見やすい。
世界史が得意でない私も楽しめる。
例えば映画『マスター・アンド・コマンダー』(主演ラッセル・クロウ)は、1805年頃のナポレオン戦争が描かれています。
ひとつの戦いで1本映画ができちゃうところを、全部入れている映画「ナポレオン」は考え方によればお得感あるかも。
1805年アウステルリッツの戦いについて監督が映像とともに解説しています。
監督「ナポレオンは優れた戦略家だ」
ナポレオンの戦略をリドリー・スコット監督が解く特別映像
しかし詳しく表現していないぶん、見逃すと誤解してしまうような場面や、理解できない部分もあると感じました。
ジョゼフィーヌと美男の騎兵大尉イッポリト・シャルルとの浮気を知ったナポレオン。
自軍を次将のクレーベルに任せエジプトに残したまま、自分は側近のみを連れ単身フランス本土へ帰ります。
映画では一見、私情で帰ったように見えますが、次の場面でさらっと真意が別のところにあるとわかります。
そしてナポレオンはフランスに到着。
すると「ジョゼフィーヌ宛の浮気を嘆く手紙」の内容が新聞に掲載されているではありませんか!
映画で説明はありませんが、手紙を載せたフランス艦がイギリスに拿捕され、手紙の内容が新聞に掲載されてしまったのです。
ナポレオンはめちゃくちゃ恥ずかしかったよね!
「もう手紙(恋文)なんて書かないぞ!」ってなりそうなものだけど、この時代の連絡手段は手紙のみ。
この後も、ジョゼフィーヌと頻繁に手紙をやりとりし、後世で暴露されてしまうのです。。。
2007年、 ナポレオンがジョゼフィーヌに宛てた恋文が6800万円で落札されています。
死後もナポレオンは人気です。
手紙には「3つのキスを贈ります。1つはあなたの心に、1つはあなたの唇に、そして残りの1つはあなたの瞳に」とある。
ロマンチックなお手紙!
1804年、あの有名なナポレオンの戴冠式も描かれます。
歴史の教科書でも見かける絵画『ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠』の世界そのままが再現されています!
タイムスリップして覗き込んでる感覚に陥るくらいよくできてると思います。
この場面だけでも映画「ナポレオン」を見る価値ありでしょう。
画家・ジャック=ルイ・ダヴィッドらしき人物もいるのが小粋な演出です。
ジャック=ルイ・ダヴィッドとはナポレオンお気に入りの画家です。
興味のある人は山田五郎氏のYoutube「大量に描かれるナポレオン肖像画の謎にせまる!【ジャック=ルイ・ダヴィッド】」をどうぞ。
ジョゼフィーヌのどこがそんなによかったのか?
6歳年上で、2児の母で、未亡人。
ホアキンは対談で、
「きっと本人たちもわかってない、なぜ惹かれ合い、なぜ離れられないのか、ミステリアスな関係だ」
と自らの考えを述べています。
ナポレオンのようなコルシカ島出身の田舎貴族から見れば、
社交界の花形、ジョゼフィーヌはさぞ高嶺の花だったと思います。
トロフィーワイフ(男性が社会的・経済的に成功した後に選んだ己のステータスシンボルにするため結婚した女性)にもぴったりかと。
それに彼女は人脈が広く、さまざまなツテがあり内助の項を発揮してくれそうなタイプ。
ジョゼフィーヌは浮気騒動後から徐々にナポレオンを愛するようになっていきますが、ナポレオンは嫡子が生まれないことを理由に離婚を切り出し、 よき話し相手(友人)へと変化します。
ナポレオンとジョゼフィーヌの関係が美化されている印象も受けますがロマンチックです。
ふたりの間に叶わなかった赤ん坊(ナポレオンの再婚相手・マリー・ルイーズの子)を見せにくるナポレオン(当時42歳)に驚きましたが、ふたりの関係について、言葉では説明がつかない雰囲気を映像で表現している見事な場面だと思いました。
このふたりの仲の真相は再婚した妻にあるようですが映画では触れられていません。
ヨーロッパ随一の名家であるハプスブルグ家のマリー・ルイーズと結婚。
この時ナポレオン41歳、マリー・ルイーズは18歳。
翌年には息子が誕生し、権力、世継ぎとすべて手に入れたはずだったが、この結婚が、ナポレオンにとんでもないトホホをもたらした!
23歳も年下のワガママ妻に戦争に行くことを阻止され、マリー・ルイーズの存在がストレスになったナポレオンは、その息抜きに離婚したジョゼフィーヌの元に足繁く通い出す。
参照記事 所さん&おすぎの 偉大なるトホホ人物伝
「23歳も年下の妻に戦争に行くことを阻止される」ってナポレオンのことが好きじゃなかったら阻止しないですよね?
この結婚は、ロシアの皇女と結婚できていればありませんでしたし、
そもそもジョゼフィーヌが世継ぎを産んでいたら離婚もありませんでした。
ナポレオンの運命は女性が鍵のようにも感じます。
ナポレオンは日本でも人気です。
長谷川哲也の漫画「ナポレオン~覇道進撃~」26巻が2024年2月29日発売しています。
「ベルサイユのばら」池田理代子の続編的漫画「皇帝ナポレオン」
ベルばらのキャラクターたちが多く登場します!
ジョゼフィーヌが主人公の漫画