「光と影の天才」と賛辞され、日本でも人気のある画家・レンブラント 。
彼の作品は「夜警」が有名で国宝級。
レンブラントの絵を個人で所有するのはもはや無理レベル。
だけど、
「これ、レンブラントじゃね?」
若き画商が、44年ぶりにレンブラントが描いた肖像画を発見&格安でゲット!
ドキュメンタリー映画『レンブラントは誰の手に』を見ました。
ドキュメンタリー映画『レンブラントは誰の手に』(感想レビュー)
このドキュメンタリー映画が面白いのは、まずひとつめは、
若き画商ヤン・シックスがレンブラントと縁の深い子孫だということ。
若き画商ヤン・シックス(11世)はオランダの貴族の家系で、彼の先祖・ヤン・シックスはレンブラントのパトロンであり、レンブラントが描いた肖像画のある家で育ちました。
ヤン・シックス親子がレンブラントについて会話する場面も興味深いです。
(ヤン・シックス家についてウィキにも掲載されてるほど)
関連リンク Jan Six - Wikipedia
ヤン・シックスは美術史を学んだあと、オークションハウスのサザビーズで働き、その後独立。
2016年にロンドンのクリスティーズに出されていた「若い紳士の肖像」を見た彼は
「これ、レンブラントじゃね?」
英貴族が6代にわたり保有していた「レンブラント周辺作」とあり、署名はありませんでしたが、ヤン・シックスはレンブラントが描いたものだと直感。
およそ11万ポンド(約1600万円)で落札しました。
「クリスティーズは困るだろうね。
レンブラントだと気づかずに11万ポンドで売ったんだ!」
参照 映画『レンブラントは誰の手に』
興奮気味に語るヤン・シックス。
でも、ヤン・シックスが興奮するのは当然です。
2020年、サザビーズのオークションではレンブラントの自画像では過去最高額となる1450万ポンド(約19億7000万円)で落札されたのですから。
11万ポンドはお買い得すぎる!
ヤン・シックスはさっそく実証にとりかかります。
複数の専門家がエックス線などを使い1年半かけて鑑定。
最終的にレンブラント研究の権威、エルンスト・ファン・デ・ウェテリンク氏=アムステルダム大名誉教授=をはじめとする美術史家により、レンブラント作と認められました。
その経緯がドキュメンタリーで描かれています。
時代別・年代順にレンブラントの作品と生涯を、科学的な調査結果を交えて紹介する、エルンスト・ファン・デ・ウェテリンク氏による伝記集
このドキュメンタリー映画が面白い、ふたつめは、
御伽話のような広大な私有地、そこにポツンと現れるお城。
ダウントンアビーより立派かもしれない。
(バックルー公爵もウィキにのってます)
関連リンク バクルー公 - Wikipedia
バックルー公爵家にはレンブラントの描いた肖像画が飾られています。
レンブラントを所有する数少ない個人です。
バックルー公爵はこの肖像画をとても大事にしていて、目を輝かせて話します。
本当に好きなんだなぁ。
その肖像画を公爵は別の部屋に飾りたいため、どの場所が相応しいかアドバイスを求めます。
「ここは反射してふさわしく無い」とか。
それよりも気になるのは公爵家の内装。
公爵家のお宅拝見といった感じで、本当にこんな家に住んでる貴族が今もいるんだ!と感じます。
このドキュメンタリー映画が面白い、3つめは、
フランスのロスチャイルド家が所有していた対になってる2枚の肖像画『マールテンとオープイェ』について。
が、単独で買うには値段があまりにも高すぎます。
1億6000万ユーロ(約200億円)
そこで、フランス・ルーブル美術館と共同購入の話が持ち上がりますが、、、
アムステルダム国立美術館が資金を全額調達できそうな見込みがつきはじめ、ルーブル美術館の館長に「2枚とも買っちゃうかもよ」と匂わせたものだから、慌てて国に共同購入に必要な資金を用立ててもらおうとします。
「ルーブルの館長は文化大臣と大統領に連絡しました。
文化大臣は非常に、、、とても優れた大臣でした。
しかし、巨匠の名画の価値をあまり理解していませんでした」
参照 映画レンブラントは誰の手に
わぁ、すごく嫌味な表現。
「レンブラントだったら仕方ないね、100億円出しましょう」と即答できる政治家ってどれくらいいるのか。
当時の文化大臣はフルール・ペルラン。
彼女は1973年ソウル生まれで生後3~4日後に道端に捨てられ、孤児院に預けられ、生後6カ月でフランスの養父母(養父は核物理学者)と養子縁組みをした、とても頭が良い人で、当時の文化大臣は、芸術というよりデジタルや経済に強い人が選任されたっぽいです。
関連リンク フルール・ペルラン - Wikipedia
結局フランスは8000万ユーロを出しました。
ルーブル美術館に肖像画が飾られ、多くの人がひと目見たさに訪問してきます。
ルーブル美術館を訪問したら見ておきたい絵です。
フランスは文化遺産を守っただけでなく、観光による経済効果も手にしたように見えます。
と言っても、肖像画は数年毎にアムステルダム国立美術館と行ったり来たりします。
フランスとオランダの交流にもひと役買ってくれています。
と映画では説明されますが、アムステルダム国立美術館はルーブル美術館を苦々しく思ったみたいよ〜。
レンブラントが本物かどうかを実証するだけに留まらないドキュメンタリー映画で、とても興味深かったです。
絵画鑑賞を楽しむうえでも、ルーブル美術館、アムステルダム国立美術館を訪れる前に見るのおすすめです。
後日談
ロスチャイルド家の登場した兄弟のいとこはレンブラントの「旗手」(1936年)を持っている、と映画で話していました。
調べたら、今はなんとアムステルダム国立美術館所蔵になってる!
いとこ売却してる(笑)
政府はこの絵の購入に1億7,500万ユーロ(1億9,130万ドル)の支払いを支援した。オランダ政府は 1 億 5,000 万ユーロ (1 億 6,390 万ドル)、レンブラント協会は 1,500 万ユーロ (1,640 万ドル)、アムステルダム国立美術館基金は 1,000 万ユーロ (1,090 万ドル) を寄付しました。
日本円で270億円だそう!
いとこやったな!
「旗手」は英国王ジョージ4世からフランスのロスチャイルド家の一人に与えられた絵画で「オランダ独立の80年戦争が背景の作品」ということがオランダにとって極めて重要と判断されたとのこと。
「(ルーブル美術館に)黙って2枚絵画を買えばよかった」
と悔しさが滲み出ていましたから、今回の購入に乾杯したことでしょう。
想像すると笑ちゃう。
アムステルダム国立美術館ではレンブラントの「夜警」の近くに「旗手」も飾ってあるそうです。
『マールテンとオープイェ』がアムステルダム国立美術館にきてるときに訪問できたら最高です!
日本でもレンブラントを所蔵している美術館がありますので紹介します。
DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市坂戸631)
・レンブラント《広つば帽を被った男》1635年
この肖像画は当初、モデルとなった男性の妻の肖像と一対であったことが分かっています。
ロスチャイルド家が所有していた肖像画『マールテンとオープイェ』のように一緒に引き取られるのはとても貴重なことだとわかります。
・レンブラント《帽子を被った自画像》
ハウステンボス美術館 (長崎県佐世保市ハウステンボス町1-1)
・レンブラント《ヤン・アセレインの肖像》1647年頃
銅版画。原版が確認されているのは世界で80数点。
そのうちの2点がハウステンボスにあります。
展示予定は各美術館で確認を。
『レンブラントは誰の手に』あらすじ
競売で落札した絵が実はレンブラントの作品だったと発表したのは、野心に燃える若き画商オーナーのヤン・シックス(11世)。
それは果たして本物のレンブラント作品なのか、はたまた無名の画家の作品か…?
一枚の肖像画をめぐる議論は、やがて真犯人を探すミステリーのような展開に。
監督は『みんなのアムステルダム国立美術館へ』(14)で美術館の舞台裏に深く切り込んだウケ・ホーヘンダイク。
美術ドキュメンタリーを専門に、長期間にわたる取材によって数多くの作品を発表してきた監督は、本作を「アートスリラーとしてつくりたかった」と語る。
その言葉通り、美術界を大きな混乱と興奮に陥れた大騒動とその顛末が、スリリングかつサスペンスフルに映しだされる。
参照 映画『レンブラントは誰の手に』
参照サイト
・【アートウォッチ】作品発見の画商「まだ見ぬ傑作はある」/映画「レンブラントは誰の手に」 - 産経ニュース
・レンブラントの自画像、過去最高の19億7千万円で落札 - CNN.co.jp