クビになった貴族の宮廷料理人が失意のどん底から、再び料理人として活躍するまでを描いた、実話がベースの映画『デリシュ!』を見ました。
映画『デリシュ!』(あらすじ)
1789年、革命直前のフランス。
宮廷料理人マンスロン( グレゴリー・ガドゥボワ)は、シャンフォール公爵(バンジャマン・ラベルネ)の食事会で勝手に創作料理「デリシュ」を出した。
ジャガイモを使ったデリシュ(ジャガイモはドイツ人が常食している下賎な食材)が貴族たちの不評を買い解雇され、息子と共に実家に戻った。
ある日、ルイーズ(イザベル・カレ)が「料理を教えて欲しい」とやってくる。
映画『デリシュ!』(感想レビュー)
冒頭の宮廷料理が見応えあり!
絵に描いたような美しい料理が給仕に運ばれる様子が素晴らしい。
貴族達は素晴らしい料理人を抱えている公爵を絶賛するが、地位の高い聖職者が「デリシュ」を酷評すると、貴族が手のひらを返し、慌てた公爵は料理人のマンスロンに謝罪を要求する。
しかし、マンスロンは謝罪しないため公爵はクビを言い渡す。
公爵の気持ちもわからなくはないよ。
階級社会のフランスで、地位の高い聖職者の顔を立てるため、あの場ではクビを言い渡すしかなかったのではないか。
日本だったら「切腹せいっ!」って言われるくらいのやつでは?
そう思えば公爵のクビはまだ軽いほう、そんな時代だと思う。
クビになって料理への情熱を失ったマンスロン。
もう料理なんて作りたく無い。
あんなに一生懸命に料理を作っていたのだ、その気持ちもわかる。
燃え尽き症候群じゃん。
だけど、勝手に「デリシュ」を出したのが原因なのよね。
それは謝罪してもよかったのではないかと思うのだけど、日頃溜まっていた鬱憤から謝罪できなかったっぽいから、いつかはこんな日が来ると思ってた!って予感はあった。
ルイーズが現れマンスロンはパンを作って売るまでに復活。
次第にそれはフランスで初めてのレストランへと発展していく。
もしもルイーズが弟子入りを希望してなかったら、マンスロンの暮らしは荒れていただろう。
歳はとっているがルイーズは魅力的な女性だ。
気が効くし美的感覚にも優れている。
ルーズに結ったヘアスタイルにフランス人女性らしいセクシーさが滲み出ている。
マンスロンがルイーズに惹かれていくのも当然。
荒々しく怒鳴る男性がルイーズには甘い声で「おやすみ」と言ったり、ドギマギした態度を見せるようになり、まるで少年のよう!その様子が笑える。
マンスロンは見た目とは裏腹に、意外と紳士なのが好感が持てる。
とにかく男が立ち直るには女が必要なのだ。
パンが美味しいと評判になり、公爵の執事がマンスロンにパン税の徴収を知らせにやってくる。
執事はついでに、マンスロンの後の料理人は長続きしていないと話し、料理を公爵に振る舞う名誉挽回の機会を申し出る。
やれやれ、これでマンスロンも報われる、と思った矢先、怒涛の展開!
マンスロンと公爵がどうなったか、ぜひ映画を見ていただきたい。
内容はシリアスですが、ところどころ細かいユーモアな演出で笑わせます。
キャラクターにも人間味が溢れていてクスッと笑えます。
執事の憎めない世渡りの上手いスキルも見逃せません。
マンスロンの息子はツッコミたくなるようなポンコツっぷり。
マンスロンを演じたグレゴリー・ガドゥボワはコメディアンからキャリアをスタートしていて、なるほど面白い演技はそういうことね。
きっと演出にもアイディアを出したのだと思います。
村の子がマンスロンの作ったパンを盗んでいったときに言ったセリフがとてもよかったです。
衣装や小道具も素敵だし、マンスロンの森の中の住まいも御伽話に出てくる家そのもの。
隅々まで見応えのある映画でした。
おすすめです。
シャンフォール公爵を演じたバンジャマン・ラベルネの演技が印象的でした。
ジョニーデップ主演「Jeanne Du Barry(『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』) 」(2023)に出演してて、多分、映像のドアを開ける執事役?だと思います。
バンジャマン・ラベルネは昔のファッションがよく似合う!