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パリに来て人生が変わった。パリの日本人はちょっと違う。 『パリでメシを食う』感想レビュー


パリでメシを食う」この題名を見たときは、B級グルメの食べ歩きのエッセイ本なのかと思いました。
ところが「メシを食う」という意味は「生計を立てていく」ということだったのです。それはそれでおもしろそう!そんなわけで、読んでみました。
著者の川内有緒さんは、パリに6年在住し、その間に知り合った人と年月を経て友情や信頼関係を築いたうえで、パリでどうやって仕事をしていけるようになったのか、という話を丁寧に書き綴っています。
著書を書いた理由をインタビューで語っていました。

「パリに来る前に暮らしたアメリカで出会った日本人の多くは、目標を持ち成功しようと努力する人でした。
日本に居た時から真面目に勉強し、留学し、就職し……というように。けれど、パリの日本人は全く違ったのです。
パリに来た経緯もさまざま。
彼らは自分で自分の人生や価値観を決めていて型破り、おもしろいと思いました。」

成功だけが人生じゃない、どう生きるかだ、そんな風にも読み取れます。

パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)

パリでメシを食う。 (幻冬舎文庫)

 

本の詳細
三つ星レストランの厨房で働く料理人、オペラ座に漫画喫茶を開いた若夫婦、パリコレで活躍するスタイリスト。
その他アーティスト、カメラマン、花屋、国連職員…パリにいつのまにか住み着いた日本人10人の軌跡。
時にセーヌ川のほとりで、時にワインを片手に、彼らが語る軽やかでマイペースなパリでの暮らしぶりに、思わず肩の力がふっと抜ける好著。

フランスでやっていくには、自らが手を上げて人の輪の中に入って行くことがキーワードのように思えました。
話は少し飛びますが漫画「のだめカンタービレ」で黒木くんがフランスでうまく行かない時期があります。
憎フランスというくらいに、日本人からしたら「ありえない!」ってことがあるんです。
でも、のだめがフランスでタフに生き抜いているのを見て、黒木くんはそれをお手本にフランスでの生活を楽しみはじめます。
自分がなきゃ駄目、そう思います。

紹介されている人々は、結構大変な思いをして今の働き場所を得たわけですけど、それでも外野から「そんなの無理だよ」「いい加減ちゃんとしたところで働きなよ」と押し付けられることなく、自分のやりたいことをがむしゃらにやることができ、だから彼らは今、やりたいことをやっている、そう感じました。
家族の応援も欠かせません。
また、フランスだからこそ日本人の感性が光り、それらを受け入れてもらえたという部分もあると思います。
紹介されている人の話も面白いですが、フランスで働くってことはどんな問題が起きてくるのか、フランスの賃貸事情なども垣間見えて、興味深く読めました。
文章も時間を追って書かれているので、小説仕立てなところがあり、彼らのドラマチックな人生が短編集のようで楽しめました。
まるで情熱大陸の文章版です。