映画『土を喰らう十二ヵ月 』を見ました。
出演・沢田研二 松たか子 西田尚美 尾美としのり 瀧川鯉八 檀ふみ 火野正平 奈良岡朋子
犬・さんしょは白馬村の近隣のお宅の飼い犬「もも」が大抜擢
映画『土を喰らう十二ヵ月 』あらすじ
長野、信州の山奥の山荘で暮らす作家のツトム(沢田研二)。
9歳のとき、口減しのために禅寺へいれられ、禅寺で精進料理の基礎を習った経験を持つ。
山の実やきのこを採り、畑で育てた野菜を自ら料理し、季節の移ろいを感じながら原稿に向き合う日々を送っている。
時折、編集者で恋人の真知子(松たか子)が、東京から訪ねてくる。
食いしん坊の真知子と旬のものを料理して一緒に食べるのは、楽しく格別な時間。悠々自適に暮らすツトムだがある日倒れ、救急車で運ばれる。
映画に登場する料理は土井善晴が担当。レシピ本がでてます。
映画『土を喰らう十二ヵ月 』(感想レビュー)
沢田研二が料理する役なんて大丈夫?
と思ったけれど、あら、手つきがいい。
日頃からお料理をされているそうで、土井善晴も指導に困らなかったようです。意外。
参照記事 「沢田さんはええ手してはります」沢田研二への指導も 「土を喰らう十二ヵ月」土井善晴のコメント&料理写真 : 映画ニュース - 映画.com
タイル張りのかまどでご飯を炊く。
セリ、こごめ、わらび、やまうど、タラの芽を摘んできて料理する。
漬物と味噌汁と白ごはん。
竹の子を掘る。
梅を漬ける。
世代によっては、なつかしい光景だと思います。
梅酢を飲んで、住職の娘(檀ふみ)は
「なつかしいですね、子供のときを思い出します」
と言うけれど、ツトムは
「小僧のときは飲ましてもらえませんでした」
切ない。
今なら良質な梅酢を簡単にお取り寄せできますが、自宅で作るのが当たり前だった時代、梅農園でもなければわずかしかできなかったので、住職は小僧にもったいなくて飲ませてくれなかったのかもしれません。
ツトムは9歳のとき、口減しのために禅寺へいれられた経緯があるわけですよ。
梅酢1杯で感じる愛情っていうのかなぁ、そういうのさえもらえなかった。
悲しすぎません!?
住職の娘は飲めた。
その悲哀が感じられました。
竹の子ってそんなに美味しいですか?
ツトムと真知子は美味しそうに掘り立ての竹の子を頬ばります。
ツトムが真知子の皿に竹の子を取り分けてやるのがとても印象的でした。
まるで実家に久しぶりに帰省した娘のような扱いに見えましたが、けれど、ツトム自身はそうした行為をされたことは過去に無いと思うので、そうした人が、自分が掘って、アクを抜いて手間をかけて作った竹の子料理をサッと真智子によそってやる場面に、愛情を感じました。
竹の子を盛り付けた大皿がすごく素敵。
ツトムが使っている器は、土井善晴と中江監督が厳選した 読谷山焼北窯、西持田窯など。
よく見ると、箸が青竹を削ったもの?洒落ている。
どこかお洒落で、楽しそう、田舎の暮らしに憧れてしまいそう。
ある日、13年前に亡くした妻の弟夫婦が、義母を見に行ってくれ、とやってきます。
義母の住まいは、昔話のような日本家屋で、台風で吹き飛んでしまいそう。
いまどきこんな住まいに住んでいる人がいるのか。
義母の葬式を任せる!妻の弟夫婦に託されたツトム
親戚付き合いがあるとはいえ、13年前に亡くした妻の母親ですよ。
さすがに筋違いだろうと思いつつ、仕方なく引き受ける。
うわー、生々しい!
恋人・真知子は葬式に助力し、なんて良い彼女なんだ!
弟夫婦はどうやらケチったらしい、和尚さんを呼んでない!
代わりにツトムがお経を読み上げる。
えー!!
この映画の時代設定って昔なのかな。。。
棺桶も大工さんが木を打って作ってたし。
原作は1978年に連載、1982年に出版ということだから、昭和の話なのか。
うーん、当時はどうだったのだろう。
犬・さんしょ。
亡くなった妻が山椒から名付けた設定で、13歳以上の老犬役。
まるまるとした体のさんしょはツトムにどこか似ているようにも見えるし、愛されていると感じられる良い犬でした。
雪の中をシッポ振って歩く姿も愛らしい。
田舎で犬を飼うのは、畑に行ったときにイノシシに襲われないためとか、猿避けとか、実用的な意味もあります。
けれどこの映画では、ツトムの同居者という位置づけだったように思います。
まだペットフードが主流ではなかった時代なのか、さんしょはツトムから釜のご飯をもらって食べます。
犬は食べる前に「待て」をさせるものだと聞きますが、ツトムはそれをしません。
撮影前にスタッフが白馬村周辺で愛犬役の犬を探し回っていたところ、スタッフの軽トラックを追いかけ、自ら出演オファーしてきたのがももちゃんだったそう。
地元の犬だからこそ、風景に馴染んでいたように思います。
ツトムと真知子は親ほど歳が離れた恋人です。
私は歳の差の偏見はさほど無いほうだと思うけど、空気感が恋人としては違和感がありました。
その感じた違和感は、結局のところ最後につながったのかなと。
真知子の質問「前からずっと聞きたかったこと聞いていい?」
あー、ふんふん、そこが心に引っかかっていたのね?
その質問のツトムの答えにも、そういうことかと納得。
ツトムは年上なぶん、人生で多くを経験しています。
それを含めていまのツトムなのです。
ツトムが「ここに住まないか」と提案したとき、彼女が即答しなかった理由のひとつだったのでしょう。
男女のアレコレが見え隠れする場面だと思います。
これって恋愛映画だったの!?
渋い映画ですが、沢田研二が味わい深く、後からじわじわくる良い映画だと思います。
それに沢田研二は歌手だけあって、語りの声がとても良い。
映画の主題歌も歌っています。
・いつか君は(作詞/覚和歌子 作曲・編曲/大村憲司)
・ 遠い夏(作詞・作曲/沢田研二)