映画『キネマの神様』 がAmazonPrimeVideo見放題配信開始しています。
志村けんが出演予定だったことでも話題になった映画。
映画『キネマの神様』あらすじ
父・円山郷直(通称・ゴウ)(沢田研二)は酒と競馬好き。
それが原因で多額の借金を背負い、娘(寺島しのぶ)の職場にまで借金取りの電話がかかってくる。
ゴウはギャンブルを禁じられ、行く当てがない。古くからの友人の館主・寺林新太郎(テラシン)(小林稔侍)のいる映画館「テアトル銀幕」に出かける。
若い頃のゴウ(菅田将暉)は松竹撮影所で助監督をしていたことがあり、テラシン(野田洋次郎)は映写技師、妻・淑子(永野芽郁)は撮影所近くの飲食店の娘だった。
松竹映画の100周年を記念した作品
映画『キネマの神様』(感想レビュー)
沢田研二はバラエティで活躍していた時代がある。
志村けんと共に『8時だよ全員集合』でコントもしていた。
沢田研二の演技が志村けんのモノマネと評している人がいたが、『8時だよ全員集合』仕込みなのだからコミカルな演技が似ているのも自然だと思うし、最後の演出を見て山田洋次監督は志村けんっぽく演じることを望んだのではなかろうか、そのための代役とも感じた。
映画館でこっそり酒を飲むゴウは『8時だよ全員集合』のワンシーンのようだ。
客席から笑いが聞こえてくるような気がした。
もしも志村けんが演じたらなら、という想いが観客によぎらないのも無理はないようにも思うが、それこそが山田洋次監督が意図するとろこだったのかもしれない。
沢田研二の演技に志村けんの姿を重ねられる良さがあるとも言える。
沢田研二の良さは70歳を超えてもなお、声が変わらず良いことだ。
若い頃のゴウ(菅田将暉)の片鱗が残っているように見えるし、酒やギャンブルが大好きな高齢者らしい元気さがある。
物語は原田マハの同名小説を映画化したものだが、内容は変えられている。
そのため映画に内容を元にした小説『キネマの神様 ディレクターズ・カット』が出版されている。
映画版では、ゴウの娘・円山歩 (寺島しのぶ)に子供・円山勇太(前田旺志郎)が登場し、孫がゴウの才能を甦らせる役目を果たす。
山田洋次監督は家族の理想を描いたのだろう。
90歳の監督らしい内容になっているとも思うが、家族で支え合う構図をコロナ禍で強調したかったのかもしれない。
山田洋次監督は若かりし頃、脚本家・助監督を務められたことがある。
つまり、若い頃のゴウは監督の自伝的な人物でもあると思われる。
映画の撮影所の様子が活き活きと表現されていたのも、自身の経験があるからだろう。
また「松竹映画の100周年を記念した作品」を意識して、古き良き映画の制作現場を作品に入れたかったに違いない。
山田洋次監督は77歳のとき、妻・よし恵さんを癌で亡くされている。
記事によると、
通夜の席の山田監督は、しょうすいしきった様子。最後のあいさつでは
「みなさまからのお悔やみの言葉を聞いて、ああ苦労かけたんだなあ…と分かりました。病気のことは絶対にこぼさなかった。とにかくぼう然としています」
と語った。
関係者によれば、よし恵さんは7年間、がんと闘病。
それでも、得意のものまねや声帯模写で、周囲を楽しませていたという。
友人には「80歳まで生きたい。その計画を立てている」と話していた。
別の知人は「言葉づかいがきれいで、無駄のない文章を書く方でした」と涙ぐんだ。
日本女子大学卒業。女性雑誌の研究家として知られ、婦人運動の先駆者として知られる平塚らいてうらを研究対象にしていたという。
「教育と世界平和」を人生のテーマとし、自宅を開放して親子読書会なども開いていた。
「吉永小百合さんが主演した“母べえ”のような人でした」としのぶ参列者もいた。
山田監督が松竹に入社した1954年の5月4日に結婚。
映画の撮影で日本全国を飛び回る夫の留守を守り、ピアノ教師になった長女とTBSに入社した次女の、2人の子供を立派に育てあげた。
山田洋次監督はこの映画を亡き妻に捧げる部分もあったのではないか。
ゴウの妻への想いは、山田洋次監督の想いではないか。
映画『キネマの神様』は山田洋次監督の自伝的な映画と捉えれば、見て納得な内容だと思う。
小説と大幅に内容を変更したのも合点がいく。
妻(宮本信子)が娘になぜゴウと別れられないのか、と詰め寄られる場面があるのだが、あれは山田洋次監督のノロケなのだろうと感じる。
妻・淑子の若い頃を演じた永野芽郁がとても可愛らしかった。
若い頃のゴウ(菅田将暉)は、とても魅力的な人物として描かれている。