老夫婦に届いた一通の手紙・映画『さざなみ』(感想レビュー)
スマホを忘れて席を外したときに限って電話が掛かってきて、タイミング悪い!
そういう経験をしたことは誰しもあると思うんですが、
この老夫婦は結婚45周年パーティーの6日前、夫宛に手紙が一通届きます。
内容は山で行方不明になった昔の恋人が見つかったという知らせ。
なぜこのタイミングで!?
夫は5年前にバイパス手術を受けていて、それが原因なのか、それとも加齢からか、やや認知症らしき傾向が見られます。
だから良くも悪くも本能の赴くままに行動してしまう。
辞書で調べ物がしたい!と思い立つままに物置小屋をあさり、
そんな夫をそっと優しく支えてやる妻。
妻が献身的に夫を世話しているのがわかります。
ところが、ですよ。
一通の手紙が届いたことで、夫の態度があらら、、、?
昔の恋人に心を持っていかれるご様子。
夫がもう少し健康体であったなら、上手に誤魔化すこともできたでしょうに。
夫がちょっとづつ意識がはっきりしてくるのにも注目で、昔のことは鮮明に覚えているものなので、脳が活性化したのかもしれません。
夫は心から妻のことを愛していると思うのですが、思い出の恋人のこともまた違った愛があるのでしょう。
たった一通の手紙が、ふたりを変えてしまいます。
妻は嫉妬します。
いや、めちゃくちゃ嫉妬します!
なるべく冷静にしているのですが、めちゃめちゃ嫉妬してる!ってわかります。
すごい演技です。
この作品でシャーロット・ランプリングがアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされたと聞いて納得!
この映画を見たきっかけは、レッドスパローのシャーロット・ランプリングがかっこよかったからです。
年相応の普通の役をどう演じるのか興味がありました。
レッドスパローのときとはまた違った、かっこいいおばあさんでした。
結婚45周年パーティーを妻はどうするのか?
夫は妻のこと、昔の恋人をどう思っているのか?
気になって最後まで見入ってしまいました。
この映画の感想レビューを読むと、女性が「わかる」と共感していることが多いようです。
男性は女心を知るヒントになることでしょう。
もしも、あのとき夫が手術をしなければ。
もしも、40周年に結婚パーティーができていたなら。
そう思うけれど、昔に有名な霊能者さんが、行方不明の遺体が見つかるっていうのは死者がやはりそれだけ見つけて欲しいと強く願った結果だと話していたので、このタイミングで手紙が届いたのは、やはり昔の恋人の想いが強かったからじゃないだろうか。
元恋人が雪山にいる間、夫婦は長年仲良く暮らしていたのだから、元恋人のほうが妻よりもずっと嫉妬していたのかもしれない。
そんなことを感じました。
でも、欧米では日本人のような霊的な概念が無いみたいなので、監督はそこまで意図して作って無いかも。
監督アンドリュー・ヘイの43歳頃の作品。
デヴィッド・コンスタンティンの短編小説『In Another Country』が原作で、最初に読んだ時に胸を突かれたそう。
監督の歳の割には渋い題材を映画にしたもんだ!感心。
アンドリュー・ヘイは映画『グラディエーター』など大作映画の編集に長年携わってきましたが、こうしたこじんまりとした物語が自分の性質に合ってると気がついたそうです。
In Another Country: Selected Stories (English Edition)
- 作者:Constantine, David
- 発売日: 2015/08/26
- メディア: Kindle版
関連リンク 映画『さざなみ』 公式サイト