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村上春樹「職業としての小説家」を読んで(感想)


あ!村上春樹氏の写真が載ってる!

それがこの本「職業としての小説家 (Switch library)」を見た時の感想

村上春樹氏はほとんどメディアに出ないことで有名で、このように自らが表紙を飾った本の装丁を見て、ただならぬものを感じ、これは読んでみたい!と思いました。

この表紙の写真は荒木経惟氏が撮影したのを知って、これまた「ははーっ」と妙に納得してしまいました。


内容は「MONKEY」で連載の「村上春樹私的講演録」に、書き下ろし150枚を加え、最後の河合隼雄先生に関する章は京都大学の講堂で語られたものです。

読み進めて半分すぎたあたりから、前半と内容の主旨というか、なんだかちょっと違和感があったのだけれど合点がいきました。


興味深かったのは 翻訳家で、アメリカ文学研究者の柴田元幸氏が「MONKEY」を創刊する際に、今回の原稿がすでに出来上がっていて、原稿を依頼されたのでは無くて、自ら掲載を依頼したエピソードです。

またこれに共通して、翻訳家達が村上春樹氏に翻訳をさせて欲しいと、すでに翻訳した原稿を持って来るエピソードも興味深かったです。

日本人だと(え!了承もしてないのに翻訳してきてるの!?)と内心、相手のPRに引いてしまう気がします。

そういう細かい部分から、なんとなーく村上春樹氏が一部の人から攻撃されてしまう理由が見えるような気がしました。

ご本人も「ある種の人を苛立たせてしまうのは生まれつきの資質のようです」と自覚されています。



そして、本のいたるところに誤解を受けないように、偉そうに言っているように読まれないように、というような丁寧な前置きが添えられているのを見て、よっぽどいろいろ言われるのだなぁ、と感じました。

ちょっとくどいと思うくらいあって、その部分を削って集めたら一章分くらいありそうなんですけど、それだけ嫌な思いをしてきたのでしょう。

第三章の「文学賞について」を読んで、もしも芥川賞を受賞していたら、と考えずにはいられませんでした。



この職業としての小説家というタイトルは本当にピッタリだと感じます。

村上春樹氏という小説家について自らその経験や手法を語り、小説家という仕事をどう捉えているのかわかりやすく教えてくれます。

ファンにとっても、小説家を目指している人、村上春樹氏に興味のある人、さまざまな人が興味深く読むことができると思います。

またプロ作家の仕事のありようや経験は、思春期の青年や、サラリーマンのおじさんの人生の参考書としても役立ちそうです。

あまり勉強しなかった、とか自分に都合のいい部分を抜粋するなら意味は無いだろうけど。

職業としての小説家 (Switch library)
村上春樹が考える、すべてのテーマが、ここにある。
自伝的なエピソードも豊かに、待望の長編エッセイ。
誰のために書くのか、どのように書くのか、そしてなぜ小説を書き続けるのか、小説を書くための強い心とは。

「これは村上さんがどうやって小説を書いてきたかを語った本であり、それはほとんど、どうやって生きてきたかを語っているに等しい。だから、小説を書こうとしている人に具体的なヒントと励ましを与えてくれることは言うに及ばず、生き方を模索している人に(つまりほとんどすべての人に)総合的なヒントと励ましを与えてくれるだろう。何よりもまず、べつにこのとおりにやらなくていいんだよ、君は君のやりたいようにやるのがいちばんいいんだよ、と暗に示してくれることによって。 柴田元幸


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