映画『最後の決闘裁判』をAmazonPrimeVideoで見ました。
14世紀のフランス、史実に基づく映画。
原作、エリック ジェイガー 「最後の決闘裁判」
映画『最後の決闘裁判』(吹き替え版)キャスト
カルージュの妻、 ジョディ・カマー(ブリドカットセーラ恵美)
映画『最後の決闘裁判』(感想レビュー)
14世紀、馬に乗り鎧を着て戦う騎士たち。
あっという間に世界観に引き込まれ、さすがリドリー・スコット監督。
リモージュの戦いで共に戦った騎士・ジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)とジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)。
友であるはずの彼らがなぜ決闘(ジョスト・騎士の一騎討ち)をするのか?
それぞれの視点で語られていきます。
興味深いのは騎士(男性)だけではなく、騎士の妻(女性)の視点が加わっていることです。
14世紀という昔でありながら、現代に通じるものがあることに気が付きます。
カルージュは領地はあれど疫病などで農民を失い不作のため、税金が支払えないほど困窮していました。
けれど長官の息子で、なんだかんだでお坊ちゃん。
ティボビルの美しい娘(持参金も多い)・マルグリットと結婚し当面の金銭問題は解決、その後は、武勲で稼いでいきます。
なんて妻想いで男気溢れる男性なのか!
というのが、カルージュ視点から描かれたカルージュ。
マルグリット視点のカルージュは、なるほどカルージュが思うほど素敵な夫ではないらしい。。。
男女の感覚の差が映像で表現されていて、同じ場面でも
(感じていることはこんなに違うんだ)と思いました。
男性はマルグリット視点を見て驚くかもしれない。
ル・グリは庶民出身ですが、頭が切れ、税の徴収に貢献し、アランソン伯ピエール2世のお気に入りになり、上手に出世していきます。
貢献の褒賞にカルージュが持参金でもらった土地と、カルージュの父の長官の仕事を与えられ、次第にル・グリとカルージュの仲はあやしくなります。
ル・グリは評判の美男子で、数ケ国語を話し、本も読み教養に溢れていますが、ル・グリも女性を口説くのは不得意らしい。
実は娼婦達とのお戯れが周知されていて、貴婦人たちは警戒しています。
カルージュの妻・マルグリットが本を読むと聞き、ル・グリはパーティーで話しかけると、あら、楽しい!
美しくて知的なマルグリットの虜になり、勝手に想いを募らせていきます。
あんなに素晴らしい女性がカルージュの妻でいるのは不本意だろうと推測します。
そしてカルージュが留守の家に強引に押しかけてしまうのです。
怖っ。
さらに怖いのは、マルグリットが貴婦人であるが故に、淑女のたしなみとして嫌がっている素振りをしているのだと思っていて、両思いだと信じているっぽいのです。
ちょっと脱線しますが、
ラジオ「安住紳一郎の日曜天国」(2024年6月2日)のリスナー(還暦さん)のお便りで、まだ携帯もない時代。
彼女と別の学校になり、通学路で朝に一瞬すれ違うことに気がついた彼は、学生カバンの裏側に黄色のテープで文字を作り、彼女に見せました。
彼女が赤くなってうつむいたのを見て、彼女が喜んでいると思った。
おぉ、、、
彼女は恥ずかしくてうつむいたのだと、数十年後、妻になった女性から知らされて、ようやく恥ずかしかったことにリスナーは気がついたようです。
恋愛では相手の反応の解釈を誤ることがあるのです。
マルグリットはル・グリを訴える裁判で質問されます。
「夫君との性行は歓びですか?」
「はい、当然です」
「当然とは言えない。
快楽の頂点に達しないと受胎できないのは承知かと。
(マルグリットはカルージュとの結婚後、しばらく妊娠できなかった)
あなたは快楽の頂点に達しますか?」
当時の妊娠の仕組みは、快楽の有無で決まるとされているのにもびっくりですが、大真面目に質問されます。
ひぇー。
現代の裁判でも被害者の負担は大きいと聞きます。
マルグリットはなんとか屈辱的な質疑応答を終え、決闘での決着にまで辿りつきます。
ところが、もし夫が決闘に負ければ、訴えは虚偽とされ丸裸にされて生きたまま妻が焼き殺されることを知ります。
聞いてない!
どうりで女性が被害にあったとき、みんな訴えを起こさないわけです。
マルグリットは寝耳に水でしたが、決闘を承諾します。
夫のカルージュに託すしか無いのです。
カルージュが決闘で命をかけて戦う、それは妻への深い愛のように見えますが、
ル・グリへの恨みをはらしたいなど己の欲や体面のためのようにも見えます。
マルグリットはどういう気持ちで決闘を眺めていたのか。
そしてこれがフランス最後の決闘裁判となります。
見る人によって感じ方の異なる映画ではないでしょうか。
最後に決闘(ジョスト・騎士の一騎討ち)がはじまります。
うぉー!どうなるの!?
史実に基づく実話なので、歴史に詳しい人なら結末はわかるでしょうが。
戦いの緊迫感は映画『グラディエーター』(2000年)を思い出します。
2時間超えたあたりの決闘シーンだけでも見る価値あり。
(残酷ではありますが、臨場感ある戦いです)