映画『30年後の同窓会 LAST FLAG FLYING』(2018) を見ました。
Amazonオリジナル映画で、原作は小説『Last Flag Flying』作者・ダリル・ポニクサン
出演は スティーヴ・カレル、ブライアン・クランストン、ローレンス・フィッシュバーン
30年後の同窓会 LAST FLAG FLYING あらすじ
2003年12月、ラリー・シェパード(ドク・元海軍衛生兵)は、一緒にベトナム戦争に従軍したミューラー(元海兵隊員)、サル(元海兵隊員)に会いに来た。
1年前に入隊し、2日前にイラクで戦死した海兵隊員の息子ラリー・ジュニアの遺体を引き取りに行くので同行して欲しい、と。
ドーバー空軍基地でドクは息子ラリーの遺体と対面したいと申し出るが、基地の責任者であるウィリッツ大佐は「ご遺体を見ない方が良い」
大佐の助言に反してラリーの遺体を見たドクはショックを受ける。
少し離れた場所でドクを見守りながら、サルとミューラーはラリーの親友で現役海兵隊員(チャーリー・ワシントン)と会話をかわす。
そしてラリーの死因の真実を知った。
30年後の同窓会 LAST FLAG FLYING 映画・感想レビュー
息子ラリーは青銅星章をもらうことになっている。
映画では『名誉ある章で英雄の証』と説明があるが、アメリカの軍関連に疎い日本人が理解するにはもう少し踏み込んだ説明が必要だろう。
青銅星章は「作戦において英雄的、かつ名誉ある奉仕を行い、成果を挙げた」アメリカ合衆国軍の兵士に対して授与される勲章である。
父ドクは息子ラリーの死因の真実を聞いたとき、
アーリントン墓地に軍葬できない、故郷の墓に入れる、と言い出す。
ミューラーは、アーリントン墓地に軍葬してもらうほうが息子は英雄になれると言い、サルはドクのやりたいようにすべき、と言う。
ミューラーとサルは反対の意見を言い合い、心の葛藤で表現される天使と悪魔のようで面白い演出だった。
ドクの心も上手く代弁している。
この映画のポイントは海兵隊だと思う。
海兵隊を知らなければ理解できないだろう。
海兵隊は厳しい訓練をやりぬいた者だけがなれるエリートだ。
サルやミューラーが当時経験した海兵隊員の訓練は映画『フルメタルジャケット』(1987)で知ることができる。
監督はスタンリー・キューブリック。
彼らは海兵隊であることを誇りに思っている。
元海兵隊員サルが、海兵隊の腕の刺青をちょっと得意げに見せることからもわかる。
そして苦楽を共にしてきた彼らは仲間として時を経ても繋がっているのだ。
それが邦題タイトル「30年後の同窓会」で表現されている。
30年後の同窓会だから、1973年頃ぶりに会ったわけだ。
英語のタイトルLast Flag Flyingの意味は「最後の軍旗掲揚」となっているが、英語のLastは日本語で最後と表現されるが、言い換えると最新(いちばん最近の)というニュアンスを含むこともある。
私は海兵隊員ではないから、海兵隊員や元海兵隊員の彼らがこの映画を見て抱く気持ちはわからない。
しかし、どんな死に方をしたにせよ、海兵隊であったことは誇りに思う、というメッセージを感じ取った。
同じようにメッセージを感じ取ったと思われる人が、結局は反戦映画ではなくてガッカリしたというレビューを書いていたが、果たしてそうだろうか。
あからさまな反戦映画は圧力がかかり、上映できなくなる可能性があることを踏まえ、
アメリカ国旗に覆われた複数の棺、
悲しむ家族、
少し長めの尺がとられていると思う。
そして、ウィリッツ大佐が、まるでアンドロイドのようにお悔やみの言葉を述べる。
多くの人にそうやってリピート再生するようにお悔やみを述べているのだろうと思わせ、皮肉が込められているように感じる。
そしてドクの要望にとことん応える軍の対応も描かれている。
電車で棺を移動する際に、複数の正装した軍人が見送るシーンに、そこまでしてくれるんだ、と思った。
数十年経っても、ドク、サル、ミューラーの3人は戦争の経験から癒えることがないことが映画からわかる。
それでも彼らはそれぞれの想いを抱えて生きている。
そして三人は再び戦争をラリーを通じて経験したのだ。
ドクは妻も息子も失った。
しかし、彼にはサルとミューラーがいる。