スポンサーリンク

AmazonPrimeVideo配信開始『シン・ウルトラマン』感想レビュー

 

映画『シン・ウルトラマン』(2022)が11月18日よりAmazonPrimeVideo配信開始しました。

1966年に放送された元祖『ウルトラマン』を、

庵野秀明(企画・脚本)

樋口真嗣(監督)

が現代を舞台に再構築した映画が『シン・ウルトラマン』です。

 

同じく18日より、学生時代の庵野秀明が総監督・主演を務めた幻の自主制作特撮映画、『DAICONFILM版 帰ってきたウルトラマン』(1983)もAmazonPrime Videoで配信開始してます。

学生時代の映像が配信されるってすごすぎ。

ちなみに脚本はオタキングこと岡田斗司夫

見るとわかるんですが、シン・ウルトラマンと類似点が多く、還暦を迎えても庵野秀明の根本は変わらないことが伺い知ることができる映画でした。

 

庵野秀明ウルトラマン好きは夫婦漫画『監督不行届』にも描かれており、安野モヨコがこの特撮映画を見せられて戸惑ったエピソードがあります。

 

『シン・ウルトラマン』あらすじ

次々と巨大不明生物【禍威獣(カイジュウ)】があらわれ、その存在が日常となった日本。

通常兵器は全く役に立たず、限界を迎える日本政府は、禍威獣対策のスペシャリストを集結し、【禍威獣特設対策室】通称【禍特対(カトクタイ)】を設立。

班長・田村君男(西島秀俊)、作戦立案担当官・神永新二(斎藤工)、非粒子物理学者・滝 明久(有岡大貴)、汎用生物学者・船縁由美(早見あかり)が選ばれ、任務に当たっていた。

禍威獣の危機がせまる中、大気圏外から突如あらわれた銀色の巨人。

禍特対には、巨人対策のために分析官・浅見弘子(長澤まさみ)が新たに配属され、神永とバディを組むことに。 

 

『シン・ウルトラマン』感想レビュー

 

常にスーツ姿の禍威獣特設対策室メンバー。

パソコンで状況をモニタリング中、避難しそびれた子供を救いに神永新二(斎藤工)が飛び出していく、、、

(あっ、彼は内勤じゃないんだ)と驚く。

周囲には自衛隊の制服を着用した人がたくさんいるのに、あえて彼が行くの?

班長・田村君男(西島秀俊)が許可を出した。

いや、そこは止めそうなものじゃない?

このわけわからなさは昭和感の再現なのだろうか。

特撮の映像は昭和感溢れつつも現代的で素晴らしいが、状況説明が足りていないところがあったと思う。

 

例えば、ウルトラマンが人類に味方する理由。

ウルトラマンと異なる。

シン・ウルトラマンでは、ウルトラマンが神永新二の人類を守りたいという強い心に引っ張られたからである。

しかし、そこがボヤッとしてる。

神永新二はそんなに人類を守ることに必死だったかい?

避難しそびれた子供を救いに行ったアレで説明は終いらしい。

ここの説明はもっと大事じゃ無い?モヤッとしたものが心に残った。

ここを丁寧に描いていれば、もしかしたら後半で泣けたかもしれないと思った。

 

残念だったのはウルトラマンのヘヤァ!などの声が無かったこと。

学生時代の自主映画では声がある。

デーモン閣下のモノマネを見て貰えばどういうものかわかると思うが、閣下が真似するくらいこの声が良いのだ。

 

庵野秀明ウルトラマンの独自解釈により、ヘヤァ!などの声がカットされてるのだろうか。

うーん、樋口真嗣監督の意向ではないか?

ウルトラマンの声はやっぱ聞きたい。

それに対し、ゾーフィ(山寺宏一)がめちゃくちゃしゃべる。

ウルトラマンでは、口数が少ないキャラだったと思うのだが。

ちょっと喋りすぎではなかろうか。

喋るのはいいとしても、あんなベラベラした感じに本当にしたかったのかな?

 

分析官・浅見弘子(長澤まさみ) はエヴァンゲリオンのミサトの立ち位置だと思った。

しかし、そういうキャラに仕上がっていないため演出が浮いているように見えた。

自らお尻を叩いて気合いを入れているようだが、あれは何をしているのか?という理解できない声も聞かれた。

当初はゼットン戦の直前で神永との軽いキスシーンがあったが、全体的なバランスなどを考えて編集でカットされた 

ウィキに記載があったので、神永新二と浅見弘子の間にはそういう恋愛的な空気があったことになる。

浅見弘子の体臭を神永新二が嗅ぐ場面があるが恋愛要素が抜けているため、あの場面が全然活きて無い。

何がしたいんだ?と感じても仕方ない。

恋愛要素を省いたことにより、話が見えにくくなっている場面がいくつか思い浮かんだ。

だったら初めから恋愛ナシで徹底的に撮って欲しい、というか旧ウルトラマンは恋愛的なことはほぼゼロで、ウルトラマン独自の価値観で人類を守っていたかと思う。

せっかく斎藤工長澤まさみが組んだのに、真面目に面白いことをもっとやってもよかったと思うし、脚本も演じ方次第でどうにでもなる内容だと感じただけに物足りなさがある。

庵野秀明ウルトラマンなのだから、恋愛要素が織り込まれた脚本なのは理解できるし、そういうウルトラマンでも良かったと思う。

 

メラフィス星人を演じた山本耕史は、真面目に面白いことをやってのける俳優で、メラフィス星人は不穏さとユーモアもあり素晴らしかった。

内閣総理大臣・大隈泰司(嶋田久作)、防災大臣・小室肇(岩松了)のキャスティングも素晴らしく、映画にリアリティをもたらした。

 

『シン・ウルトラマン』はもっと芸術的で美しい物語に仕上がったはず、というのが感想。

庵野秀明が忙しいとは言え、長年の夢だったのだから監督まで担当して欲しかった。

庵野秀明ほどウルトラマンを徹底的に理解して、それを独自の世界観で表現する力を持っている人はいないからだ。

しかし、エヴァンゲリオンだって過去に叩かれた映画があって制作回数を重ねてクオリティを上げてきたわけだし、もう一度、シン・ウルトラマンを制作するれば上手くいくに違いない。

『シン・シン・ウルトラマン』を見たいものである。

 

 『ウルトラセブン』の傑作「狙われた街」(実相寺昭雄監督)のような名作を残すのはは難しい。

ちなみに、実相寺昭雄監督は『帝都物語』(1988)も有名で、嶋田久作は『帝都物語』の魔人、加藤保憲を演じ、その強烈な印象はもはや伝説級で、影響を受けたクリエイターは数多い。