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「お腹が痛い」と言えない子供。理由が深い。アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』企画・プロデュース:明石家さんま(感想レビュー)

 

アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』をNetflixで見ました。

 

アニメ制作はSTUDIO4℃だけあってクオリティが高い。

STUDIO4℃は、「となりのトトロ」「魔女の宅急便」(宮崎駿監督)のラインプロデューサーを務めた田中栄子が主宰する精鋭クリエイティブ集団です。

『漁港の肉子ちゃん』はジブリっぽい演出がみられます。

 

原作は西加奈子の小説『漁港の肉子ちゃん』

 明石家さんまが読んですぐに映像化の権利を吉本に押さえてもらったというほど惚れ込んだ作品で、アニメ映画の企画・プロデュースをしています。

登場する「北陸の漁港」のモデルは東日本大震災前に旅した宮城県石巻市と女川町です。

素直にキラキラしていた石巻の思い出をもとにして描かれています。

 

声優は主人公・肉子ちゃんの声を大竹しのぶ、娘キクコはCocomi

二宮・ 花江夏樹、サッサン・中村育、二ヤモリ/トカゲ/松本くん・下野紘

 

アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』あらすじ

 

小学5年生のキクコ。

母親は明るいデブの肉子ちゃん。

男との関係が駄目になる度に引っ越してきた。

今度は北陸の小さな漁港で、肉子は焼肉屋で働き出す。

 

 

アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』感想レビュー

 

タイトルは『漁港の肉子ちゃん』だけど、主人公は小学5年生のキクコです。

男に惚れやすく騙されやすい肉子ちゃん

クラスメイトの派閥

気になる男の子、二宮

キクコの「思春期のちょっと不安定な気持ち」が描かれます。

 

波風を立てないように、うまく立ち回ろうとするキクコ。

他の子みたいな子供っぽさはキクコには無い。

そうやって生きてこなければならなかったのだ。

 

肉子ちゃんが働く焼肉屋の店主・サッサンが渋い。

キクコが不安を感じていることを察したサッサンは、

「今日のまかないは、みすじだ」

とお肉を奮発します。

「はやめのクリスマスプレゼントだ」

さらり、と言う。

そうやって、温かく見守るサッサン。

サッサンのまかないを食べて育つキクコ、という構図が美しい。

 

ある日、キクコはお腹が痛くなる。

けれども「お腹が痛い」と肉子ちゃんに言えない。

察する能力のない肉子ちゃんは、当然気が付かない。

我慢して、自分でどうにかしようとするキクコ。

小学5年生の子供なのに「お腹が痛い」と言えない。

その理由に苦しくなる。

いや理由自体は単純なのだけど、その理由が言えない背景、キクコの気持ちを想像すると苦しいのだ。

 

このアニメ映画は、明石家さんまが企画・プロデュースです。

明石家さんまは自身のような経験を持つような人に向けて制作したのではと思いました。

明石家さんまは3歳の時に実母が亡くなり、小学4年生のときに父親が再婚しています。

継母は義弟だけを可愛がり、寂しい思いをしたと語っていました。

そのため大竹しのぶと結婚した際、連れ子であった息子にそういう思いはさせないように接してきたといいます。

映画の底抜けに明るい肉子ちゃんは、どこか明石家さんまに通じるものがあるような気もします。

 

 

映画に登場する小説があります。

サリンジャーライ麦畑でつかまえて

この小説は、ジョンレノンを暗殺したマーク・チャップマンに大きな影響を与えたことでも有名です。

社会の欺瞞に対し鬱屈を投げかける内容は時代を超えて若者の共感を呼び、青春小説の古典的名作として世界中で読み継がれています。

 

村上春樹訳ヴァージョンの『ライ麦畑でつかまえて』もあります。

 

司馬遼太郎『峠』

河井継之助といえば『峠』」というほどの大ベストセラーになった時代小説

映画『峠 最後のサムライ』(2022)の原作にもなっています。