ドキュメンタリー映画『クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代』を見ました。
クリムトやシーレの作品に共通する官能的な世界はなぜ生まれたのか。
その社会的な背景を、
シーレ研究の第一人者である美術史家ジェーン・カリア、
ノーベル生理学・医学賞受賞者のエリック・カンテルなど
様々なスペシャリストたちの解説を交えて作品を見ていきます。
クリムトがエゴン・シーレを可愛がっていたんだから、師と言うべきほどのクリムトの影響をエゴン・シーレが受けなかったはずがないと思うわけ。
だけど、このドキュメンタリーでは時代背景が作品に及ぼした影響に焦点をあてているのが興味深い。
1918年、エゴン・シーレ(享年28歳)がスペイン風邪で亡くなりました。
その3日前には妻も同じ病で亡くなりました。
エゴン・シーレは死にゆく妻のスケッチを残しています。
そして同年、クリムト(享年55歳)も亡くなりました。
ウィーンではクリムトはクールでハンサムな男として知られていました。
彼の死後、何人もの女性が彼の子を授かったと法廷に訴え出ました。
14件の鑑定中、6人が子供だと認められました。
、、、クリムトの作品が官能的なのって必然だったのでは。
エゴン・シーレもハンサムとして知られています。
クリムトの作品は写真を模写したため、人物が写実的です。
背景や衣装はイタリアのゴシック期に活躍した画家・ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノの影響を受けています。
クリムトの有名な作品のひとつ「ユディト」
ユディトは旧約聖書外伝「ユディト伝」に登場する女性で、ホロフェルネスの首をはね、手に持つヘブライ人寡婦ユディトの姿を描いたもの。
恍惚状態になっている瞬間の表情を描いてます。
やばい人じゃん。
首切ってハァハァ言ってる顔って凄すぎ。
しかも、胸が出てる。
今まで描かれてきたユディトと全然ちがうじゃーん!
そのスキャンダラスな表現が注目されました。
クリムトの魅力は、古くからの題材を今風に描いたことだと思います。
クリムトのユディットは、流行りの髪型にネックレスをしています。
しかし、それだけでこの作品がそんなに取り上げられる?
どっちかって言うと、英雄的な彼女をエロっぽく描いたら非難されるのでは。
「ユディト」をネット検索、すると、ドキュメンタリーでは語られていなかったけど、描かれているモデルがウィーン社交界のアデーレ・ブロッホ=バウアー夫人とわかり、これだ!と思いました。
バウアー夫人は、ユダヤ系の銀行家モーリッツ・バウアーの娘で超金持ち。
バウアー夫人はサロンを開き、クリムトなどウィーン分離派の芸術家たちを支援していました。
想像だけど、バウアー夫人が「超いいじゃーん!」って認めれば、その作品は傑作になるほど業界で力があったのでは。
『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像』は『黄金のアデーレ 名画の帰還』という映画にもなっていて、元の所有者であるフェルディナント・バウアーの姪マリア・アルトマン(主演はヘレン・ミレン、アカデミー賞主演女優)が所有権を訴えて裁判を起こします。
その後、『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』(1907年)は2006年6月、当時としては史上最高値の156億円(1億3500万ドル)で、エスティ・ローダー社社長(当時)のロナルド・ローダーに売却されています。
クリムトの有名で人気ある作品「接吻」
顕微鏡で見たカタチを、なんかオシャレ~、という感じに描いているのが流石クリムト。
それに比べて、エゴン・シーレはクリムトの代表作「接吻」へのオマージュとして作成した「愛撫」
枢機卿の尼僧に対する性的欲望が伺える作品で直球すぎ。
エゴン・シーレの作品はどうも好きになれない。
エゴン・シーレの有名な絵「死と乙女」
描かれているのは、長年同棲していたヴァリ・ノイツェル。
階級社会だった当時、中産階級職人の娘、ハルムス家のエーディトと結婚を決めたエゴン・シーレに抱きついているヴァリを描いているとされています。
どういう気持ちで、この絵を描いたん?
この映画で興味深かったのは、この時代、スペイン風邪で多くの人が亡くなり、女性の変革期でもあり、コロナが流行している現代にちょっぴり似てると感じたこと。
つい数日前、男子高校生が「生理の授業」を受けたニュースがありました。
男子生徒たちは初めて生理用品を触ったり、「外出しているとき、急に女の子が生理になったらどうする?」というテーマのディスカッションが行われていました。
クリムトやエゴン・シーレが現代にいたら、こういうことも作品に反映させたかもしれないと思うドキュメンタリー映画できした。
ニュース 男子高校生が学ぶ!“生理”の授業 「これが日常茶飯事だとすごく大変・・・」男女の”見えない壁”なくす社会へ|TBS NEWS DIG - YouTube