アカデミー賞で起きた、ウィル・スミス ビンタ騒動。
司会者・クリスロックは毒舌コメディアンで知られますが、
女優で妻のジェイダ・ピンケットの髪型に関する冗談を言いました。
「次は『G.I.ジェーン』の続編を楽しみにしているよ」
ジェイダは脱毛症を患っています。
ジェイダはこの冗談に顔をそむけます。
そしてウィル・スミスはクリス・ロックにビンタしました。
ビンタされた後、クリス・ロックに反省はありません。
「『G.I.ジェーン』のジョークじゃないか」
これって、いじめっ子が「いじめてねーし」って言うのと同じでは?
アメリカでは、暴力を振るったウィル・スミスが批判される意見が圧倒的だそう。
受賞したスピーチで「愛は狂ったことをさせる」と言い訳っぽく聞こえたのもいけなかったらしい。
え!?じゃあ、ウィル・スミスはあのときどうしたら良かったの!?
私ってば「ビンタでよく我慢したな」って思ってた。
ビンタが駄目ならば、どうしたら良かったのか考えていきます。
クリス・ロックの言葉の暴力は、脱毛症を患っている他人も傷つけたと思います。
そして、嘲笑や冗談にされるのが嫌だから、ウィッグを被る羽目になる。
ウィッグを被ると、ますます脱毛症が悪化するという脱毛症の女性の告白記事を見かけたことがあります。
脱毛症だけでなく、癌などの抗がん剤治療で脱毛する人も多くいます。
私の友人も抗がん剤の影響でウィッグを被っていました。
私はクリス・ロックのこの冗談のせいで、病気を患っている人がウィッグを被らなくても良い社会から一歩遠のいたような気がして残念でなりません。
近年は脱毛症の方がウィッグを被らず「ありのままの自分でいること」が称賛される傾向にありました。
さて、いつのアカデミー賞だったか、
当時、日本車企業の良くないニュースがあって、日本車のCMに出演の多いジョージ・クルーニーに対して司会者が冗談(皮肉)を言う場面がありました。
周囲に笑いが起きたように思います。
ジョージ・クルーニーにカメラはアップになり、、、
ジョージ・クルーニーは黙って睨んでいました。
そしてこの後、特にニュースになることもなく終わりました。
2008 (CM) ではホンダですが、以前にトヨタ、ダイハツも出演してました。
では、ウィル・スミスも同じように睨んだら良かったのか?
ウィル・スミスはラッパー(歌手)出身であり、あくまでイメージですけど、(やられたらやり返さなきゃ男じゃない)的な部分もあると思うんですよね。
具体的な行動を起こさなければ、起こさなかったで「妻を守らなかった」と言われそうな気もする。
結果論にはなりますが、
ウィル・スミスは主演男優賞を受賞しました。
受賞スピーチで報復のチャンスがあったわけです。
しかし、ビンタしたことで謝罪スピーチになってしまいました。
無念。
クリス・ロックが冗談を言ったとき、彼は舞台にいて、言わば彼の土俵でした。
マイクを持たないウィル・スミスに発言権はありません。
その場ですぐに反撃せずに好機を待つ。
これができていたなら、また違う結果になったでしょう。
自分の土俵になったら戦う、それまでカッコ悪くても、周囲から何を言われても待つ。
これは『ウォーキング・デッド』の主人公・リックを見て思うことです。
そして報復を考えるよりも、まず妻を思いやること。
あの場は、妻に寄り添って手を握って励ますなど、ビンタの他にできたことがあったのではないでしょうか。
ジェイダが傷ついたことにスポットが当たれば、周囲は同情し、クリス・ロックの言葉は中傷だと非難され、周囲を味方につけることができたかもしれません。
ビンタで全てがクリス・ロックに有利になりました。
アカデミー賞では、毒舌な司会者のとき、ハプニングが翌日の話題を飾ることを期待されている節があり、悪習じみていると感じます。
つまりアカデミー賞で、セレブがいじられることはよくあることなのです。
ウィル・スミスはまんまと術中にハマってしまいました。
「挑発されても、その手にはのらないぜ!」
そうした気構えや余裕を持って対応できる大人が称賛されるのだと思います。
※追記 「怒りを自制できない」ことも評価が低い要因のひとつのようです。
怒りを自制できることが評価されるのもありますが、すぐ暴力を振るうという元来の黒人像を体現してしまったことへの失望が高いようです。
また、ウィル・スミスはユーモアのある俳優としても知られています。
ウィル・スミスが言葉で反撃することを期待した人も多かったのかもしれません。