映画『硫黄島からの手紙』と対になっている映画『父親たちの星条旗』
AmazonPrimeVideoに登場したので見ました。
映画『父親たちの星条旗』(あらすじ)
海兵隊は硫黄島の摺鉢山の征服に成功し、頂上に星条旗を打ち立てた。
そのときの写真「硫黄島の星条旗」が新聞の一面を飾ると、アメリカ国民は熱狂した。
財務省は戦債キャンペーンの広告塔に、写真の兵士の生き残りである3人を起用し、資金集めに協力させる。
しかし、旗を掲げた者の名前が間違っている事が判明する。
映画『父親たちの星条旗』(感想レビュー)
次々と銃撃に倒れる兵士たち。
いま会話していた仲間の首が飛んできて、足元にごろり。
これが戦争なんだ、そう言われた気がしました。
悲惨な映像で戦争の恐ろしさが伝わってきますが、戦争を経験した人間がどうなるのか。
クリントイーストウッド監督は、映画『父親たちの星条旗』で戦争から人がどんな影響を受けたかを描いています。
クリントイーストウッド監督の言葉
アメリカ側の視点から描く『父親たちの星条旗』は、硫黄島の戦いだけでなく、帰国した兵士たち、特に、星条旗を掲げる有名な写真に写った兵士のうち、生還した3人の若者たちがあの死闘から受けた影響を追っています。
彼らは戦時公債用の資金集めのために都合よく利用されました。
戦闘そのものと、帰国後の宣伝活動の両方が彼らの心を深く傷つけたのです。
~中略~
私が観て育った戦争映画の多くは、どちらかが正義で、どちらかが悪だと描いていました。
しかし、人生も戦争も、そういうものではないのです。
私の2本の映画も勝ち負けを描いたものではありません。
戦争が人間に与える影響、ほんとうならもっと生きられたであろう人々に与えた影響を描いています。
どちらの側であっても、戦争で命を落とした人々は敬意を受けるに余りある存在です。
だから、この2本の映画は彼らに対する私のトリビュートなのです。
日米双方の側の物語を伝えるこれらの映画を通して、両国が共有する、あの深く心に刻まれた時代を新たな視点で見ることができれば幸いです。
参照リンク
硫黄島の体験とは対照的に、アメリカで「硫黄島の星条旗」の英雄扱いは華やか。
パーティーでは企業の社長達が名刺を渡しにくるほどの人気ぶり。
けれども兵士達は花火の音に戦場の砲弾がフラッシュバックして、英雄騒ぎどころではない。
以前に見た映画『ビリー・リンの永遠の一日』を彷彿させました。
その後、3人の人生が紹介されるのですが、「英雄」としての利用価値が無くなったら、まったく人々に見向きもされなくなります。
先日のアフガニスタン・首都カブールの爆破テロで13人の米兵が犠牲になりました。
そのなかに海兵隊員のライリー・マクコラムさん・20歳がいました。
今回が初の国外派遣で、3週間後には父親になる予定だったそう。
彼の姉によると、マクコラムさんは兵役後、歴史の教師とレスリングのコーチになることを夢見ていたそうで、私が想像するに、お金のために軍隊に加入したのでしょう。
参考までにこんな記事があります。
米軍リクルーターが、中間・貧困層の若者に向けて「売り」にしている4点セットがある。
「大学、お金、旅、愛国心が手に入る、と言われた」
元陸軍兵マーティン・スクロギンス(28)はそう説明する。
大学卒業までの奨学金や生活費・ボーナスが保証される。
国内外の基地に駐屯し、自費では行けない見知らぬ土地に行ける。
そして一兵士として愛国心を高め、米国民を守るという使命を果たして家族や人々に尊敬される──。
まさに中間・貧困層の若者にとっては「サクセスストーリー」だ。
参照リンク 「大学がタダと言われ…」低所得者層を狙う「米軍リクルート活動」 (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)
マクコラムさんは 米軍リクルーターによって軍隊に加入したのではないでしょうか。
まさか自分が死ぬなんて、そのときは想像もしなかったことでしょう。
マクコラムさんは除隊後の夢を見ていたと思います。
爆破テロで他にも22歳、23歳、25歳など女性を含めた若い兵士もお亡くなりになりました。
彼らも夢があって、軍隊に加入したのでは。
映画『父親たちの星条旗』は昔の戦争を描いているけれど、クリントイーストウッド監督は、除隊後にPTSDを発症してしまうリスクなど、夢を見て軍隊加入を決めてしまう若者に警鐘を鳴らしたかったのもあったのではないでしょうか。
首都カブールの爆破テロでお亡くなりなった兵士のニュースに、チラリと「硫黄島の星条旗」の銅像が映ります。