家政婦として働く猫の姿を描いた『きょうの猫村さん』で知られる、
ほしよりこさんの『逢沢りく(上)(下)』を読みました。
ほしよりこさんは雑誌BRUTUSで特集されるほど人気の漫画家さん
『逢沢りく』あらすじ
14歳の美少女・逢沢りく。
彼女は感情と関係なく必要と思えば涙を流すことができる。
美しいりくが泣く姿は人の心を動かすが、彼女自身の心はいつも冷めている。
ある日のりくの行動をきっかけに、ママが敬遠していた関西の親戚の家にしばらく預けられてしまうことになる。
りくは嫌々関西へ行くのだった。
『逢沢りく』感想レビュー
インタビューで、ほしよりこさんが『逢沢りく』について忠臣蔵だと話されていました。
忠臣蔵は江戸時代、浅野内匠頭長矩(あさのたくみのかみながのり、35歳)が、幕府高家(こうけ)の吉良上野介義央(きらこうずけのすけよしひさ、61歳)に小刀で斬りつけた事件を発端に、浅野内匠頭は即日切腹、赤穂藩は取りつぶしとなり、赤穂浪士らが吉良邸に討ち入りするお話。
『逢沢りく』の表紙と忠臣蔵が結びつかず、どんな話なのだろう?と興味を持ったのがきっかけです。
りくのお母さんは家事を完璧にこなすし、傍から見たらすごいお母さん。
だけど有能な人にありがちな、ちょっとどこか人間性に欠けた人。
父親も浮気をしながら奥さんを愛しているという。
そんな両親のもとで育ったりくは、涙を流すとき、人が見ていないと意味が無いと言います。
その姿は、愛情に飢えているように見え、(かまって欲しい)という感情の表れではないかと思うのです。
場面が関西に移ると、お洒落な世界観がガラッと変わって一気に庶民的になります。
そして、面白いことやふざけたことばかり言ってる関西人の会話に、段々とコミュニケーションの大事さが伝わってくる不思議さ。
余分な会話のようで、余分ではないこの感じは何なの!?
関西のおばちゃんがりくに愛情ある言葉を掛けるのも素敵で、りくの心が少しづつほぐれていくのがわかります。
極めつけは子供の「時くん」。
時くんがりくのことが大好きなのが端々で伝わってきます。
赤福餅をりくに取ってあげようとする姿がとても微笑ましいです。
関西で生活をはじめたりくは泣けなくなります。
それは泣いて気を引く必要が無くなったからではないでしょうか。
りくは関西の暮らしで、冷めてた感情が段々と感情が表に出てくるようになってきます。
りくが泣くとき、それは今度はウソ泣きでは無くなります。
スーパーなどへ行きますと、ときどき子供がわんわんと泣いているのを見かけます。
「わかった、ひとつだけ!」
親が言い放つと、ケロッと泣き止み、そそくさとお菓子をひとつカゴに入れます。
すごい。
子供の「泣く」という行為は、生きるためのたくましい術だと感じます。
りくは大人びいているけれど、内面はまだ幼い子供だったのではないでしょうか。
関西でりくは成長して、ちょっと大人になり、関東へ帰っても、もうウソ泣きはしないのではないかな。
ほしよりこさんはエド・シーランのミュージックアニメを手掛けています。
もし『逢沢りく』が映画化されたら、エンディングはこの曲が似合うと思いました。
エド・シーラン「スーパーマーケット・フラワーズ」 ほしよりこ Ver
スーパーマーケットフラワーズはアルバム÷(ディバイド)に収録されています。
私の読んだインタビューは見つかりませんでした。
代わりにこちらのインタビューが詳しいのでおすすめです。