名言集の続編「心のノート2」が付いた超豪華版 もあります。
あらすじ
太陽フレアの影響で月面に取り残されているムッタとフィリップ。
ふたりを帰還させるためNASA、JAXA、ロスコスの3国協力体制が組まれ、物資を積んだロシア製の着陸船「ルナランダー」が月へ送り込まれた。
しかし降下ポイントが約80㎞ズレるトラブルが!(おおよそ東京~箱根の距離)
ルナランダーへムッタとフィリップが向かうため、月面シミュレーションにケンジとレイジが任命されるが、道は険しく困難を極める。
宇宙兄弟 38巻(感想レビュー)
ローマは一日にして成らず。
このことわざは、繁栄したローマ帝国も、築くまでには約七百年もの歳月を費やし、長い苦難の歴史があった、つまり決して短期間で完成するものではないということです。
宇宙兄弟38巻もまさにそれ。
宇宙飛行士になるための研修や、そこで培われたチームワークなど、今までの積み重ねが活きてくるという回です。
元の能力が高いとしても、日々努力をしてなければイザというときに活躍できないことがわかります。
涙腺にきたという感想を多数見かけました。
私は(それが仕事じゃん)という気持ちで読んでいて、これまでの宇宙兄弟の流れからして、ケンジとレイジも月面シミュレーションに参加しているからには成果を出さないと、次のミッションに加えてもらえないかもしれなくなるという懸念が無いわけでは無いんじゃないのかな。
常に成果を求められるエリートな世界の厳しさを感じていました。
もちろんムッタとフィリップを救いたいとみんなが心から思ってプロジェクトに参加しているのもわかります。
映画『アポロ13』を見たことがある人なら想像しやすいと思うのですが、宇宙で事故が発生したら、その場にあるもので解決しなければなりません。
宇宙兄弟38巻もルナランダーへ行くため、その場にあるもので解決しなければならなくなります。
そのへんの説明がわかりやすく描かれていて、チームに参加している気分で読めてよかったです。
8月19日、JAXAの宇宙補給船こうのとり9号機のISSからの離脱ライブ動画をチラッと見たんですが、駄目だ、ごめん、ずっとは見てられない、説明も入って来ない。
宇宙兄弟がいかにエンターテイメント性を高めて描かれているか感じました。
宇宙兄弟38巻は37巻に引き続き、ムッタとフィリップの命にかかわる話なので、真剣な内容になりがちです。
しかし、笑いどころがいくつもあって楽しみながら読めました。
AIのブギーとのやりとりも相変わらず面白いですし、ラジオ「モーニングレディオ」のDJパーポーの秘密や、ビンスの意外な一面が見られたのがツボでした。
ムッタとフィリップは月に取り残されているわけですが、実はピンッときてません。
実際にそんな経験があるわけ無いので、わからなくて当然だと思うんですが、ムッタとフィリップがこうして不安の中、それを表立って感情を出さずに、ミッションをこなしていくのがどれだけすごいのか、それがわからないのが残念な気がするんです。
映像化されたほうがわかりやすいんでしょうね。
吸い込まれそうな暗い空間に取り残される怖さは。
スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』は暗黒と無音の世界がもう怖い。
AIのブギーがムッタとフィリップを襲わないことを祈る。
『ゼロ・グラビティ』もマット・コワルスキー( ジョージ・クルーニー)のその後を想像すると怖くなる。
マットは宇宙兄弟のブライアンみたいな人なんですよね。
見た後「宇宙には行かないぞ!」と思わせる『エイリアン』。
これで人々が宇宙飛行士に憧れが薄れた時期があったんじゃなかろうか。