能は好きですか?
私は『花よりも花の如く』に出会ってから興味は沸いてきました。
能を学べる楽しい漫画になっていて、成田美奈子さんはNHKで能の番組にも出演され、羽衣など漫画で取り上げた能のお話をされたこともあり、本格的な取材をもとに描かれています。
成田美奈子さんの新刊(1月4日発売)『花よりも花の如く 19巻』を読みました。
能楽師の主人公・憲人が成長していく様子が描かれています。
19巻では主に「安達原」について。
安達原の物語は、旅する山伏一行は荒野の一軒家に宿を借ります。
「決して寝屋を覗かないでください」と言って薪を取りに行った女主人。
山伏の従者が我慢できずに寝屋を覗いてしまう、
という福島県の昔話がベースになっています。
「見るな」と言われると見たくなる心理。
どうしてわざわざ言うのかな。
日本の古典にはよく出てくる「見るな」ですが、言いつけを守るほうがいいのか、守らないほうがいいのか、考えさせられます。
ケースバイケースだとは思うんですよ。
鶴の恩返しでは見てしまって鶴が去ってしまうんですが、でも、鶴をあのまま働かせてたら死にますよね?
うん、覗かれたのはよかったんですよ、鶴にとっては。
人には見られたくない、知られたくない部分がある。
それを寝屋に例えているのではないか。
憲人は日常生活を通じて「安達原」の理解を深めようとします。
前巻で小学校の同級生が学校に集合し、タイムカプセルを掘り起こそうとしたら、タイムカプセルが無くなってたのですが、同級生のなかには、夜逃げ同然に引っ越したり、無職になったり、ブラック企業で疲弊していたり、引きこもりになったり、さまざまな人生を歩んでいて、未来の自分に宛てた手紙が必ずしも喜ばしいものではないかもしれない、と憲人は思いはじめます。
そうか、そういうこともあるのか。
タイムカプセルがいちばん流行ったのって高度成長期。
調べてみたら、1970年の日本万国博覧会の年に、松下電器(現・パナソニック)と毎日新聞により企画、製作され大阪城公園に埋められたタイムカプセルがあってこれを真似たことが判明。
当時は日本の経済が上手くいっていたので、誰しも働いていれば給与はどんどん上がったし、終身雇用だったりで未来はとてつもなく明るく、あの時代のタイムカプセルを開けた大人は子供の頃に描いた未来の自分より素敵になれていたかも。
タイムカプセルが見つかって、さて、憲人は何を思うのか。
私はタイムカプセルを埋めたことが無くて、学校行事で埋めた先輩達がうらやましかったんですが、でも、私が子供の頃に描いた夢は(パンが食べたいからパン屋)とかそんなものでしたから、手紙を読んで脱力することになったかも。
『花よりも花の如く 19巻』では 宮城県松島まで、能に所縁のある場所を辿る回もあります。
ちょっとした旅行気分も味わえます。
能の演目『善知鳥(うとう)』より
末の松山風荒れて、袖に波超す沖の石
この「末の松山」と「沖の石」が松島に実在しています※諸説あり
「末の松山」は能だけでなく、
「契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは」
そんなに末の松山は昔から有名なのね。
旅する機会があれば、寄ってみたくなりました。