「ブロークバック・マウンテン」を見た感想を聞くと「いい映画だったよ!、、、ゲイ映画だけど」と言われます。
いい映画だけど好みに分かれると思う、ということなんだと思いますが、監督のアン・リーがこの映画を「普遍的なラブストーリー」と強調しているように、とても良いラブストーリー映画でした!
原作はE・アニー・プルーの同名の短編小説で、アメリカ中西部を主な舞台として、1963年から1983年までの20年間にわたり、惹かれ合う2人の男性の姿が描かれます。
時代設定がいいんですよね。。。
彼らのやり取りはハガキ。
ハガキなんですよーーーー!!
ちょっと浮き足だってハガキを手にしてるところとか、ヒース・レジャーやギャック・ギレンの細やかな演技が素敵なんです。
2006年のアカデミー賞で、作品賞を含む同年作品中最多の8部門にノミネートされ、3部門受賞の映画です。
サウンドの繊細なギターの音が、美しい自然と秘密の恋愛の儚さが感じられてよかったです。
女カウボーイなファッションがとっても可愛いアンハサウェイが見られます。
父は農業器具を売る、お金持ちのお嬢さんラリーンですが、そこは西部の女性、積極的で、 おっぱいプルンなお色気シーンもあり、アンハサウェイがんばってます。
ブロークバック・マウンテンでは、妻の葛藤もほんのり描かれており、映画に深みを与えていると思いました。
ラリーンは本当にジャックを心から愛しているなぁと感じたのが、ジャックに「あなたはトップ・セールスマン」と言いますが、その後でセールスマンが1人しかいないとがわかるところです。
1970年代のアメリカの農業は好況で、セールスマンがいなくても飛ぶように機械が売れました。
今市子さんのコミックエッセイ「萌えの死角」で、腐女子から見た映画やドラマの解説など、どういうポイントでBLを楽しんでいるのかがわかります。
なるほど、そういう見方がわかればBLも楽しめます。
私には目からウロコでした。
「ブロークバック・マウンテン」についても触れてます。
以下はネタバレを含む映画の感想です。
イニス(写真)とジャックの出会い。
「ジャック・ツイストだ」の自己紹介に対し「イニスだ」と返します。
ジャックが「苗字はなしか?」と聞き返すわけですが、フルネームを名乗った相手に名前だけ返すのはちょっと失礼です。
また名前だけしか教えないということは、親しくなるつもりがない、とか相手と深く関わる気が無いとも取れます。
イニスにとっては、この仕事はその場しのぎのものなのでしょう。
彼のマナーから育ちが良くないことも見てとれます。
最初の数分間で、ジャックはイニスに気があること、イニスは人見知りするタイプ、とさまざまなことが伝わってきます。
この映画はどこをとっても無駄が無く、それぞれ意味のある場面ばかりです。
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ふたりがなぜ恋に落ちたか、というかノーマルなイニスがなぜ?
イニスはクマに襲われて九死に一生を得ます。
危機的な経験し、生存本能が働いたことも影響したのではないかな。
あとは、暴れ馬を乗りこなすジャックを見て、西部の男ならロデオへの憧れや、尊敬心も抱くのではないでしょうか。
登山でも男性二人きりだと、そういう関係になってしまうこともあると聞きます。
もともとイニスにちょっとそういう素質もあったのかもしれません。
父親がゲイの男性へのリンチを幼いイニスに見せたエピソードがあります。
それがきっかけでイニスはゲイに興味が沸きつつも、いけないことだと認識したのではないかなと考えます。
父親がリンチを見せたのは、イニスにその気があったから、という意見もありましたが、兄と一緒に見せてますし、そんな深い考えを持つような父親ではない気がします。
それにしても、彼らのはじまりには(おぉ!そういう感じっ!?)とのけぞりそうになりました。
そして四年ぶりに会ったときに、イニスが思ったよりノリノリだったので、時間を置いたことで受け入れたんだなと感じました。
イニスが朝からそわそわしてジャックを待ってる姿も、少年のようでなんだか可愛いです。
イニスはジャックと山から下りて別れた後、吐き気をもよおしてしまいます。
あれは説明のつかない衝動と原作にあるようですが、イニスの葛藤からくる体のストレス反応なのではないでしょうか。
自分はゲイではない、でもジャックを好きだという気持ちは本物で、しかしそれは受け入れがたいことです。
そしてこれから結婚しようと思っています。
いろんな気持ちが込み上げてきて心と体のバランスが崩れたのだと思います。
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ジャック(写真) は車を修理しようとして死んだ、とイニスはラリーンから電話で聞きます。
そこで、ジャックがリンチされる回想シーンがあります。
イニスの想像のように描かれていますが、ジャックはゲイのためリンチにあって殺された、とパンフレットに書いてあったとネットの書き込みを見ました。
ラリーンは死因を話す前に、小さな舌打ちをします。
それに大きな意味があると感じます。
うちの旦那はゲイで、それが原因でリンチにあって殺されたの、とわざわざ他人に話す妻はいないでしょうから、ラリーンは用意しておいた死因を説明したのでしょう。
ある夫婦との出会いで、ジャックはその旦那さんとふたりで、化粧室に行った妻達を待つ場面があります。
「好きに使える小屋があるんだが、、、釣りとかしないか?わかるだろ?」
と誘われますが、これはソッチのお誘いだと思います。
よく見ると食事中に旦那さんがジャックに色目を使っています。
8月にイニスがリバートンの女と付き合っている、と話した後、ジャックはその奥さんと不倫してると話します。
すぐ後で「実は、、、、」と口ごもってから「時々お前が恋しくなってたまらなくなる」と言います。
あのとき告白したかったのは、奥さんではなくその旦那と浮気してる、ということだったのではないでしょうか。
ジャックの父親が、ラリーンと別れてある男と実家を立て直すとジャックが話していた、というセリフでそれがわかります。
イニスと最後に会った後、ジャックは実家に寄ると話していたので、そのときに父親に話したのでしょう。
ジャックがゲイだと周囲にバレるのは時間の問題だったと思いますが、イニスとの8月の話し合いがきっかけで、ジャックはいつもに増して性的に荒れていたことも考えられ、バレる可能性が高まっていたのかもしれません。
ラリーンが遺灰の半分をブロークバック・マウンテンに撒いて欲しいというイニスの遺言を話したとき、それが存在する山で、1963年にふたりが過ごした山だと知るとラリーンは込み上げる涙を押し殺します。
ジャックがイルマを愛していたことに気がついたのでしょう。
最後に電話を強く切った様子で、ラリーンの気持ちが伺えます。
19歳になった娘のイニス・ジュニアがひとり暮らしをしているイニスを訪れます。
イニスが、子供にアイスクリームを食べさせに町に連れて行ってやろうか、など子煩悩なところがあったので、娘はパパになついているのでしょう。
興味深いのは娘には優しいのに、妻には冷たかったところです。
娘は結婚の報告をします。
その後、イニスはジャックとの思い出のシャツを眺めて「I swear」と言いいます。
欧米の結婚式では「誓います」と言うときに「I swear」と言います。
娘の結婚式の報告と、この言葉が掛かっていて、イニスはジャックに永遠の愛を誓ったのだと思います。
この場面の日本語訳に憤慨している人が見られますが、文化的なこともあって、あそこで「誓います」って訳されたら意味が分からない人もいるでしょうし、翻訳の難しい場面だと感じます。