漫画「3月のライオン」が好きです。
高校生にしてプロ棋士・桐山零(神木隆之介)の成長を描く物語。
将棋の腕もあげていくのだけれど、少年が大人へと成長していく桐山君の様子に胸が熱くなります。
映画化され上映前は盛り上がっていた「3月のライオン」。
上映後、パッタリと噂を聞かなくなりました。
う~ん、嫌な予感がしますが、映画「3月のライオン(前篇)」をレンタルしました。
内容は漫画の1~6巻までという感じ。
ギュウギュウに物語を詰め込んだようで、語りきれてない部分があります。
全体的に早送りで見せられてる感じ。
というか、原作を読まずに映画を見た人には「?」と感じるであろう理解しにくい場面も多々見受けられたので、飛んでる、と言ったほうがいいかも。
原作を読んだ私でさえ「えっ!?」と驚くような突然の回想シーン。
二階堂が桐島に向かって「・・・じゃねえよ!」とテレビ画面から叫んでる場面は、ここでいきなり!?とドン引き。
前に桐山が見てる場面が無かったよね?
撮影はしたものの、後で大幅にシーンをカットしたため、つじつまが合わなくなったとか?
そんな感じに話の流れが突然激流になります。
見ていて「あわわっ!」と振り落とされそうでした。
また桐山零と他人との心の触れ合いが描き切れておらず、桐山の成長がわかりにくいです。
心の葛藤などが伝わってくる前に試合がはじまり、映画の中だけが盛り上がり、鑑賞側が置いていかれてる状態です。
あれだけの漫画を映画の前篇・後篇でおさめようと思ったら、他をバッサリ切って、ひとつのテーマに絞って描く必要があると感じますが、そもそも映画だけで描くのは無理なのかも。
原作をチラッと読み返しただけでも、かなりバッサリ切ってるのがわかるんですけど。
改めて、ドラマの後に映画化した「のだめカンタービレ」や「信長協奏曲」の理由がわかります。
スターウォーズのように、めちゃくちゃ面白い1場面だけとりあえず映画にしてしまうくらいのほうがよかったなぁ、と個人的には思います。
桐山零(神木隆之介)
外見的にも神木隆之介氏はぴったりだと思います。
特に後半がよかったです。前半は演技に苦戦してるように見えました。
そもそも桐山の部屋の小道具が多いです。
桐山の部屋は生活感が全くない。
けれど、そこに将棋があるのです。
部屋を見ただけで、あぁ、この人には将棋しか無いのだなぁとわかる部屋。
それが桐山の部屋だったのですが、映画ではもうそのあたりから崩れているので、画面を見て桐山は普通の高校生とはだいぶ違う奴なんだ、というのが伝わりにくいです。
二階堂晴信(染谷将太)
二階堂の性格が原作と違いすぎて、これには正直ガッカリ。
映画での二階堂は成金趣味で、言葉使いや態度、食べ方が汚いです。
染谷将太さんはそういう演技を頼まれたんでしょうか。
原作の二階堂は育ちの良さが活きてて、素直な友情から桐山零にお節介を焼くのも頷けます。
年齢さえあえば、市川猿之助さんあたりに演じてもらいところ。
にじみ出る品の良さや勝負の世界を表現するという意味で歌舞伎界の若手に二階堂を演じられる人がいればピッタリだったように思います。
幸田香子(有村架純)
気性が荒い役で、有村架純さんのイメージとは真逆のキャラクターにびっくりしたキャスティング。
有村架純さんは好きだけれど、やっぱり幸田香子のイメージでは無いなぁ。
「桐島部活やめるってよ」で意地悪な役を演じた松岡茉優さんはどうだろうか。
川本あかり(倉科カナ)
あかりは原作ではムチムチなキャラクターですが、倉科カナさんはスラリとした印象でした。
思ってたよりあかりっぽくて良かったのだけれど、もっとムチムチな方を希望。
桐山零があかりには酔ってカッコ悪いところを見られているので素直になれるという表現がわかりにくいのが残念。
原作では桐山零がプロ棋士というのを川本姉妹はかなり後まで知らずにいて、ただの高校生の桐山君と川本姉妹の交流が深まるのですが、映画では最初からプロ棋士と知っていて、なんだかなぁ、と感じます。
島田開(佐々木蔵之介)
文句なしにぴったり。でも試合で身を削ってる凄さが伝わってこなくて勿体なさすぎる。
胃が痛いのを隠してて、裏でめちゃくちゃ痛がってる様子が描かれてないので、ただただずっと胃が痛い人になってて、そりゃ試合でも痛いよね、と普通に見てしまうからかも。
がんばれー!と応援したくなったり、プロ棋士のプレッシャーってすごいんだな、と島田の試合から感じられると、桐山がどういう世界に足を踏み入れようとしているのか将棋の世界を知らない観客にも伝わってくると思います。
林田高志(高橋一生)
文句なしにぴったり。後に、林田と島田があかりの取り合いのような状況になることを考えれば高橋一生VS佐々木蔵之介に多くの女性が萌えると思います。
林田先生の良さはもっと伝えて欲しかったとは思います。
桐山君が林田先生のアドバイスで前向きになる様子や成長する姿が見えないのが残念。
幸田柾近(豊川悦司)
豊川悦司氏はお父さんの役を演じる歳なのだなぁ。
もう少し若ければ後藤政宗を演じていたのかも。
原作よりカッコイイお父さんですが、プロ棋士の貫禄も感じられてよかったです。
台詞が少なく、ワイルドさが際立っていて良かったです。
ただ後藤のイメージにしては少し若くない?というのが気になったところ。
後藤は41歳の設定なので、伊藤英明氏と大体同じ年齢なんですけどね。
宗谷冬司(そうやとうじ)名人(加瀬亮)
原作の宗谷冬司はCMに起用されるなど、将棋の名人にしては少し華がある感じ。
見た目が年齢より若く、林田は「10代から顔が変ってないんだよぁ」と言っています。
加瀬亮氏演じる宗谷冬司は、羽生名人に寄せていて、いかにも名人らしいくリアルなキャラクターになっています。
将棋好きに受けそうではありますし、素晴らしい演技だと思いますが、3月のライオンの宗谷冬司では無いと思います。
もう少し可愛い感じの外見に仕上げてくれてたら宗谷冬司らしくなっただろうに。
思い切ってディーンフジオカ氏くらいの感じでやったらどうだろうか。
川本ひなた(清原果耶)
太陽のように明るいひなちゃんですが、清原果耶さんはどこか影がある方で、ちょっとイメージが違いました。
桐山零がひなちゃんの明るさに救われる部分が描かれていないのが残念。
山崎順慶(奥野瑛太)
丸坊主キャラなのですが、奥野瑛太氏は髪だけでなく眉毛もちゃんと剃ってて、インパクトがすごい!
原作より凄みのあるキャラクターになってて、クライマックスの登場で盛り上がりました。
三角龍雪(中村倫也)
私はオダギリジョーさんのようなイメージでいたので、だいぶ違ってました。
ふわふわ~としつつ、キリッとしてて、お節介。
もうちょっと面白味のあるキャラクターだと思います。
松本一砂(尾上寛之)
もう少し憎めないキャラクターだと思うのですが、ウザイ感じに仕上がってました。
原作で桐山を酔い潰した先輩は明らかにされていませんが、松本と三角では無いようです。
けれども映画ではこの二人のせいになっているので仕方ないところはあると思います。
蜂谷すばる (?)
キャラクターはちょっと違いますが、蜂谷すばるかな?と思う役の方がうるさくて耳障りなのがよくでててよかったです。