「大統領の料理人」おすすめ映画・フランス映画(感想レビュー)
以前に予告を見て料理が美味しそう!と思っていた映画「大統領の料理人」を見ました。
料理が美味しそうなのは当然で、フランス大統領官邸(エリゼ宮殿)史上初の女性料理人として1980年代に2年間、フランソワ・ミッテラン仏大統領(当時)に仕えたダニエル・デルプシュをモデルにしています。
郷土料理を得意とする主人公の女性シェフ・オルタンス・ラボリが、大統領シェフとして活躍します。
大統領の料理人(字幕版)
片田舎で小さなレストランを営むオルタンス・ラボリがスカウトを受け、連れて来られた新しい勤務先はエリゼ宮。
そこはなんとフランス大統領官邸のプライベートキッチンだった。
エリゼ宮史に名を残す女性シェフの真実が今、明かされる。
「大統領の料理人」(感想レビュー)
オルタンス・ラボリはフランス大統領官邸(エリゼ宮殿)から、大統領のプライベートシェフのスカウトを受ける。
しかし、もうはじめから雲行きが怪しい。
オルタンス・ラボリがこのスカウトを断る拒否権は無いように見える。
そして、主厨房の男性シェフ達のあからさまな失礼な態度。
オルタンス・ラボリは、雇い主は大統領なのだから、大統領が認めてさえくれればいい、そんな姿勢で仕事をしていく。
それて次第にプライベートキッチンは孤島となっていく。
女性が閉鎖的な男性社会で働くとき、直面する問題。
愛想よくできれば、もしかしたら上手く立ち回れたかもしれない。
オルタンス・ラボリは、男から見たら可愛げの無い女で、そういう性格は男性社会において苦労する。
彼女はどうしたらよかったのだろう。
ただ大統領に美味しい食事を作りたかっただけななのに。
プロの料理人、ましてやフランス大統領官邸では「食事が上手い」それだけでは勤まらないのだ。
オルタンス・ラボリは実直だ。
私はそういう人が好きだ。
けれども、多勢で働くような場所に向いてない。
はじめに、オルタンス・ラボリが案内されたとき「誰にでも挨拶をすること」と言われる。
それは、要約すると人間関係を上手くやっていく、ということではなかったか。
向いていないなりに人間関係について努力をしないオルタンス・ラボリは、プライベートキッチン以外に仲間と呼べるような関係を築くことができなかった。
「頭に来てもアホとは戦うな」というタイトルの本を見て、オルタンス・ラボリに必要だったのはこの精神かもしれないと思った。
オルタンス・ラボリは戦ってしまったのだ。
しかも勝手に戦ってる。
しかし、助けが必要になったときには「冷蔵庫を貸してくれ」と頼みに行ってしまう。
主厨房に彼女に冷蔵庫を貸すメリットはない。
苦手なヤツを徹底的に利用するには、相手に得があるように取引を持ち掛けないければいけない。
オルタンス・ラボリはそうした駆け引きの出来ない人だ。
オルタンス・ラボリがなぜ、他人と上手くできないか。
それは彼女が田舎出身であることが大きいと思う。
彼女が口を開けば、親戚(血縁関係)しか出てこない。
彼女にとって親戚は信頼できるビジネスパートナーであり、「親戚だから」ということで、何もかもこれまでスムーズにやってきただろう。
彼女を「探しまくっていた」とフランス大統領官邸職員に言われても、彼女は無言でムッとしているのみ。
自分が悪いわけじゃない、そう思ってる素振りがある。
本『人間関係で「疲れない心」に変わる 言いかえのコツ』で、
「たとえ同じ内容のことを言っても、言い方によって、相手の印象や反応は、ガラリと変わってきます。
そういう意味から言えば、人間関係がよくなるかどうかは『ものの言い方』『口に出す言葉』にかかっていると言えます。」
味方を増やしたければ、ものの言い方や態度を改めたらいいのだ。
オルタンス・ラボリは2年でフランス大統領官邸を去ることにした。
とても悲しい去り方だった。
主厨房の男性シェフが、彼女が去ることを知ってワッと喜びの声をあげる。
輝かしいはずの経歴は光を失って見える。
はじめて「大統領の料理人」を見たときは、フランス大統領官邸ってなんて嫌な所なんだと思った。
女性が男性社会で働くのは難しいよね、そんなことを表現しているのかと思ったが、時間を置いてから見たら印象が変わった。
女性職員がソースについて言及する。
オルタンス・ラボリは料理のプロとして発言をするが、女性職員は断固反対する。
つまり、オルタンス・ラボリは女性職員も味方につけられていないということなのだ。
なぜそこまで女性職員の態度が攻撃的なのか理解できなかったが、フランス大統領官邸において、オルタンス・ラボリの評判が悪い可能性はある。
誰かから悪評を吹聴されて、それを鵜呑みにする人もいるのではないか。
仲間に恵まれるというのはとても大事だと思った。
そして、オルタンス・ラボリが心をポッキリ折ってしまわないためにはどうしたらよかったのか考えた。
持ち前の明るさとサービス精神が旺盛なのだから、彼女らしいやり方でやればよかったのだ。