宮沢りえさん主演の映画「紙の月」の予告を見て気になっていました。
そしたら角田光代さんの小説がもとになっていると知って読んでみることにしました。
映画の印象だとオフホワイトだったけれど、本は温かみのあるピンクが主体となっていて意外。
紙の月 (ハルキ文庫)
わかば銀行の支店から一億円が横領された。容疑者は、梅澤梨花四十一歳。二十五歳で結婚し専業主婦になったが、子どもには恵まれず、銀行でパート勤めを始めた。
人が犯罪を犯すのは、些細なことがきっかけだったりする。
これくらいいいじゃない。
そんな程度のことが、どんどんエスカレートしてしまう。
だから怖い。
企業は個人の道徳心に甘えすぎているところがあるように思う。
犯罪を犯すようなことはしないのが前提で仕事を任せている。
最近では事務系の仕事は人件費の削減で、ひとりに多くの仕事を任せ、重複していた作業を省いてしまうことがある。
しかし、その重複作業は「確認」するための必要な場合も多々ある。
つまりひとりの確認で済ませたら、そのひとりが不正を働けばだれにも発見できない。
よく、信頼しているから確認しない、という人がいるがそれは間違っている。
「信頼すること」と「確認しない」のは同じでは無い。
不正が起きる会社というのは、確認作業が機能していない場合が多い。
不正を起こした本人が悪いのだけど、その隙を作ってしまった企業側に全く問題が無いとは思わない。
目の前にニンジンをぶら下げられて、誰がずっと無視できるというのだろうか。
企業はそのぶら下がったニンジンが、監視カメラで見られていることを周囲に知らしめれば、誰もそのニンジンを取ろうとは思わないだろう。
梅澤梨花も些細なことがきっかけで、お客さんのお金を借りてしまうようになるのだけど、それが妙に説得力があって、女性ならそのような状況だったらそうするかもしれないなぁ、と思わせるリアルさがあります。
宮沢りえさんのような女性を思い浮かべていたのでなんとか読めたけれど、あの映画の予告を見ていなかったら手に取って無い作品だと思います。
以前に角田光代さんの小説をいくつか読んでみたことがありましたが、どうも好きになれず最後まで読めなかったこともあったんですが、この小説は出だして梅澤梨花を知る数名が梅澤梨花の横領のニュースを聞いて驚くところが面白く、ぐいぐいと引き込まれました。