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めちゃくちゃにしていくけど憎めない   「おちゃのじかんにきたとら」


パリパリ伝説をお描きになっているかわかみじゅんこさんのおすすめと聞いて興味を持った絵本、おちゃのじかんにきたとらです。
確かに巷の評判も良いですし、表紙のとらの顔が、うちの猫にちょっと似ていることもあって、かわいいなぁと思い購入してみました。すると、なかなか奥深い絵本のように思えたのです。


おちゃのじかんにきたとら
おちゃのじかんのごちそうになろうと、やってきたとら。家の中にあるたべものをぜんぶたべてしまいます…。このおはなしに、ちいさいひとたちの胸ははらはらどきどきし、そして、とらの、礼儀正しい“おおきな”ふるまいに、心を解き放っていくことでしょう。読んであげるなら、およそ3才くらいから。

あらすじは、お茶の時間にいきなりとらがやってきて、お腹が空いたと言って家じゅうのものを食べてめちゃくちゃにして帰って行きます。

でもね、親子はちっとも怒らない!不思議〜。

そこで、よーくイラストを見ると、とらがめちゃくちゃしている間、子供がとらのしっぽを抱きしめている場面があるのですが、それを見て「あっ」と思ったんですね。
そうか、人間がやっていたら腹が立つけど、とらだったら、無条件で許してしまう気持ちわかる!現に猫が悪さをしても、仕方ないなぁと許してしまっていますから。
子供の私だったら、この絵本を読んで怒らないことを当たり前に受け入れている気がしました。そんな童心がポッと戻ってきた瞬間でもありました。

絵がとても洒落ていて、綺麗な色使いも良いです。時代設定が古いので、全体的にレトロな雰囲気なのもかわいいです。
それから、とらのイラストが、猫好きにはたまらないんじゃないかぁと思います。二本足で立っているとらの絵がすごくよくて身悶えました。

最後に、親子はとらがいつまた来ても良いように、タイガーフードのとても大きな缶詰を買います。
うわ〜、そんな缶詰どこで売ってるの!?子どもだったら絵本を読んだ後、スーパーで探してみるかもしれないですね。


この絵本を読んで作者に興味を持ちました。

作者はジュディス カー(Judith Kerr)さんです。絵本の最後のページを引用すると「著名なドイツ人作家の娘としてベルリンに生まれました。カーはナチスの手を逃れて1933年に家族と共にドイツを離れました。スイスとフランスで過ごした後、1936年にイギリスへ移りました。カーは、作家のナイジェルニールと結婚し、二人には女優の娘と小説家の息子がいます。日本に紹介された他の作品にヒトラーにぬすまれたももいろうさぎがあります。」
作者の生い立ちを知ると、横暴とも思えるとらはナチスなのかとも読めますが、私はとらは単なる困難などの直面する出来事の象徴であると思います。だって、もしもとらがナチスを表現しているなら、頬ずりとか、ぎゅっと抱きしめたりとか、そんな表現にするのかなぁと思うからです。そして、とらが去って行ったあとの家族の行動にこそ、作者の想いが込められているのではないかと思うのです。