私はこれまで西加奈子さんの本をほとんど読んでます。
サバサバとした文章なんだけれど、どこかキラキラしていて、文章が飛んだり跳ねたりしているのが読んでいて面白いのです。
以前にどこかのインタビューで西加奈子さんが遠藤周作の「沈黙 」に衝撃を受けたと言いました。
信仰の純粋さに心を打たれた、、、というようなことを答えていたかと思います。
そしていつか信仰にまつわるような話を書きたいと。
そうして今回、直木賞を受賞したサラバで信仰について書かれています。
表紙は西加奈子ご自身が描かれたキリストや仏陀の絵がコラージュされています。
サラバ! 上
1977年5月、圷歩は、イランで生まれた。
父の海外赴任先だ。チャーミングな母、変わり者の姉も一緒だった。
イラン革命のあと、しばらく大阪に住んだ彼は小学生になり、今度はエジプトへ向かう。
後の人生に大きな影響を与える、ある出来事が待ち受けている事も知らずに――。
サラバの上巻を読みました。
西加奈子さんの文章は読み慣れていたはずですが、それでもはじめのほうは読むのに乗れなくて苦戦しました。
でも、三分の一あたりを超えたところから、ぐいぐいと流れるように読めました。
文章が村上春樹さんをはじめ、多くの作家の影響を受けてやや古典的な文章になっている印象を受けましたが、西加奈子さん独特のフレーズもそこにはちゃんと織り込まれていて、活き活きとしていました。
上巻では、主人公の圷(あくつ)が生まれてから、どんな暮らしをし、家族からどんな影響を受けて思春期を迎えたか、までが描かれています。
もともとの生まれもった性格を柱に人が環境に順応し成長する様は、ひとりの人生をつぶさに描いていると感じました。
なるほど圷はこのようにして出来上がってきたのだな、とわかります。
小さい頃に受けた影響というのは後々まで大きく関わってくるものだと改めて感じました。
下巻でこの圷がどうなっていくのか楽しみです。
圷はイランに生まれ、日本で育ち、今度はエジプトで幼少期を過ごし、そしてまた日本へ戻ってきました。
エジプトの暮らしぶりは日本でゴーンと夕方に鐘が鳴るように、アザーンが祈りの時間だと告げるのに親しみを感じましたし、圷の姉の様子に変化が見られたところや、圷がエジプトで暮らすのだと自覚する場面などは目を見張るものがありました。
それから、日本での暮らしが描かれるなかで「関西弁」が出てくるのですが、関西弁のイントネーションや雰囲気が掴めない人には、その空気感を読むのは難しいと感じます。
例えば、圷のお母さんが「嘘やろ」と呟く場面があるのですが、そこをプッと笑えるかどうかは読み手次第ですね。私はプッと笑いましたけども。
サラバは長い作品ですが、朗読したものを聞いたら(朗読したもがあればの話ですけれど)、また印象が異なると思います。
ダイオウイカは知らないでしょう (文春文庫)
第152回直木賞を受賞した小説家・西加奈子と文筆家のせきしろが、常識はずれの短歌道に挑戦! 個性的なゲスト達にお題を出してもらい、そのお題にちなんだ歌を詠んだ記録。登場するゲストは穂村弘・東直子・俵万智・いとうせいこう・星野源・山崎ナオコーラ・華恵・光浦靖子・ミムラ・ともさかりえ・山里亮太(南海キャンディーズ)・山口隆・勝山康晴・入山法子といった、短歌・作家・お笑い・ミュージシャン・俳優として活躍する、様々なジャンルの個性豊かな14人。