大奥で知られる漫画家よしながふみさんのジェラールとジャックです。
1998年(平成10年)〜2001年(平成13年)の作品です。
舞台はフランス革命の起こるちょっと前あたり。
親の借金のかたに男性娼婦専門の売春宿に売られた貴族の少年・ジャックが、そこで「はじめての客」としてジェラールに会います。
はじめからBL描写があって、ぎゃー!となりますが、物語はさながら映画を見ているようにドラマチックで、美しい場面があり、そしてその心のふれ合いに感動するのです。
P192〜193、278〜279なんて、絵コンテ的でそのまま映像化できますよ。
読んでいても映像が想像できて、素晴らしい表現です。
シリアスな場面があるかと思えば、思わずクスリと笑えたり、何度読んでも飽きません。
フランス革命時代のめまぐるしい世の中の動きと共に、登場人物達ひとりひとりの血肉の通った人生を凝縮した濃密な物語。
貴族でありながら、娼館に売られた少年ジャックを金で買った顔に傷のある男ジェラール。彼らの出会いは、蓋をされた悲しみの上にあった。でも悲しみは喜びの入り口でもあるのだと信じたくなる一冊です。
またハッとするセリフが至る所にあって、読んでいても面白いです。
P49の料理人のシャルロットがジャックに言ったセリフは、もう、それだけでジェラールのことがわかるような、ハッ!とさせられました。
よしながふみさんの作品の中でいちばん好きだというファンが多いのも頷けます。
一度は読んでみることをおすすめしまーす。
執事の分際 (白泉社文庫)
革命期フランスの動乱の中、名門貴族に仕える切れ者執事・クロードと、贅沢に慣れきった美しい主人・アントワーヌの甘く密やかな恋愛劇。身分違いの、それ故に熱く切ない二人のロマンスを完全収録。